インターネットで飲食店を探すとき、どのようにお店を決めていますか?
いつものお気に入りのグルメサイトで探しているという人もいるかと思いますが、検索サイトにエリアや料理ジャンル、シーンなどを入力して、ヒットしたグルメサイトで探しているという人も多いのではないでしょうか。
「グルメが探せて予約ができればどのサイトでもいい」と考えている人も多いなか、株式会社 USEN Mediaが運営する料理人の顔が見えるグルメメディア「ヒトサラ」は、ファン数を着実に伸ばし始めています。その裏側には一体どのような施策があるのでしょうか。
USEN Mediaでプロダクト・マーケティング課長を務める長﨑卓史さん、同じくプロダクト・マーケティング課に所属する吉田亜美さんにお話をうかがいました。
ヒトサラを特徴づける独自のコンテンツ
―初めに、「ヒトサラ」の特徴をお聞かせいただけますか。
「ヒトサラ」というサイト名は、料理人(ヒト)と料理(サラ)に由来しています。そのお店の料理だけでなく、その料理をつくるシェフにも注目しており、シェフのインタビューや、シェフがお気に入りのお店を紹介するコンテンツなども掲載していることが特徴です。
単なるグルメ検索サイトではなく、グルメメディアとしての側面も持っている「ヒトサラ」。
料理人の掲載数は1万4000人以上と、国内ナンバーワン。シェフがお気に入りのお店を紹介するコンテンツは、ほかではあまり見られない独自の取り組みです。
シェフがお気に入りのお店を紹介するのは、結果的に他店を紹介することになるので、難しい部分もあります。
ただ、僕らは飲食業界に対して貢献したいと考えており、おすすめされたお店に行ったユーザーがそのお店を気に入れば、そのお店を勧めたシェフへの信頼感も高まると考えているんです。
店舗の紹介ページもプロのカメラマンが撮影、プロのライターが取材から執筆して作成されており、ヒトサラでしか知ることのできない質の高い情報を知ることができます。
月間利用者数も着実に伸び続け、一昨年の12月に2000万ユーザーを突破。同時に月間のPV数も1億を突破しました。
―ヒトサラは品質の高いコンテンツが魅力の一つだということが分かりましたが、なぜそんなにもコンテンツに注力されているのでしょうか。
ひとつは、サイトのブランディングです。グルメサイトは、お店の基本情報が記載されていて、自分の条件に合うものが検索できれば、ユーザーとしては事足ります。
ただ、それではどのサイトを使っても同じになってしまう。なおかつ、今はGoogleで検索から予約まで完了してしまうため、ヒトサラならではの提供価値がなければならないと考えているんです。
ヒトサラの強みの一つは、紙メディアなどでしっかりと経験を積んだ編集者たちから成る、独自の編集部を持っていること。その強みを最大限に生かしてコンテンツを充実させることが、他サイトとの差別化になると考えているのですね。 最近では、地方自治体や商業施設からも掲載の相談が増えているそうです。
検索による偶然の流入を、どう定着化するか
―掲載の相談が増えていたり、ユーザー数が伸びていたりと着実に成長されている様子ですが、マーケティングにおける課題はあったのでしょうか。
ヒトサラの特色の一つはシェフにフォーカスしたコンテンツですが、数あるコンテンツの中では閲覧の比率が低く、コンテンツ自体がユーザーのみなさまにまだまだご認識いただけていないのではないかと感じていました。
コンテンツを充実させていく一方で、そもそもその存在が知られていないために、そこから実際の予約に至っていないという課題があったそう。
少し前まではGoogleの検索などから偶然アクセスしてご予約いただくことが多くあり、グルメサイトはみんなそこに甘んじてきた部分がありました。
ただ、それだけでは、わざわざヒトサラに掲載いただいている飲食店様に十分な効果をお返しすることは難しい。そこで、コンテンツを知ってもらうことでしっかりとブランディングをし、ヒトサラのファンを増やしたいと考えていたんです。
そこで注目したのが、「Webプッシュ通知」でした。
検索から偶然アクセスしていただいたユーザーのエンゲージメントをいかに高めるかを考えたときに、Webプッシュ通知がアプローチ方法として効果が高いのではと考えたんです。
そして、台湾発のテクノロジー企業Appierが提供するマーケティングオートメーションツール「AIQUA(アイコア)」を導入。プッシュ内容は、予約訴求など複数パターンがあります。
そのうちの一つとして、シェフのインタビューコンテンツや、USEN Mediaが毎日更新している食の情報サイト「ヒトサラマガジン」のコンテンツの訴求です。
配信の際には、送るタイミングや頻度をできるだけパーソナライズするように意識したそう。
以前検索されたエリアや料理ジャンル、サイト内の行動を参考にセグメントを細かく切ることで、ユーザーにとって有益かつ興味をもっていただけるコンテンツの配信を行っています。
また、個々のユーザーのアクションをトリガーに通知を送るということにもチャレンジしていて、予約の途中で離脱してしまった人には予約のリマインドを、来店日時が迫っている人にはリテンションを送ることで、ユーザー体験の向上につなげようと考えています。
Webプッシュ通知は一方的に送られてくるために、ユーザーに嫌がられてしまうことも少なくありません。
しかし、結果的にユーザー体験が向上するのであれば、ユーザーにとってうれしい情報にもなり得えそうです。
ライトユーザーのファン化に手ごたえ
―Webプッシュ通知導入後の結果はいかがでしたか。
Webプッシュ通知を受け取っていただいているユーザーは、再訪率が高いという結果が出ています。
また、プッシュ通知を配信していないときでも定期的に再訪いただいており、コンテンツがユーザーの方にいいものだと思っていただけていると感じています。
ヒトサラには読みごたえがあるコンテンツが多いため、当初意図していたとおりに、コンテンツを介してファンが増えているよう。
プッシュ通知の購読者数は会員数の20倍にまでのぼっており、プッシュ通知の平均CTR(クリック率)は6~8%と言われているところ、ヒトサラの平均は12%と高い効果を得ています。
サイト全体の回遊率も着実に向上しており、ライトユーザーの定着化に手ごたえがありますね。今後は、成長スピードをさらに上げたいと考えています。
ユーザーがクチコミでお店を一方的に評価することが多い現在のグルメサイト業界に対して、疑問を持っているという長﨑さん。
ユーザーにとってはもちろん、飲食店にとってもメリットのある仕組みをつくることで、ユーザーと企業が相互に評価しあうなど、ユーザーと飲食店が公平にマッチングできるプラットフォームにしたいと考えているとのことでした。
長﨑さん、吉田さん、お忙しいなかありがとうございました。