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201907.02

5億円の資金調達を成功させた起業家が語る、起業の成功に不可欠な2つの要素

今年2月、Facebookで「シリーズAで約5.4億円の資金調達を成功させた事業プレゼン資料」が公開され、起業家の間で話題になりました。

この資料を公開したのは、2016年にMarketing-Robotics株式会社を設立し、同社の代表取締役を務める田中亮大さん。自社で開発したマーケティングオートメーション(以下、MA)ツール「マーケロボ」の導入支援、BPOまでを一貫して行っています。高額なツール代は無料で提供して、コンサルタント、運用代行までを行うというビジネスモデルです。

そこで今回は、田中さんにインタビューを敢行。田中さんの事業モデルの考え方や、田中さんが思う起業する際に欠かせない要素についてのお話をうかがい、どうやって数億円単位の資金調達を成功させ、事業を軌道に乗せることができるのかを探りました。

縮小する市場で売上を伸ばす、新たなビジネスモデル

―田中さんが起業に至ったきっかけと、現在の事業モデルを選択された理由をお聞かせください。

―田中
起業のきっかけは、僕が共同創業した会社の社長と、事業展開の方向性が異なってきたことです。
僕自身も事業をつくったり販売会社の社長を務めたりする中で、これからのBtoBのビジネスのあるべき姿、進むべき方向が浮き彫りになってきました。だからそれを見据えた事業をやりたいと思ったんです。

そして、単独での起業の道を選ばれた田中さん。やりたいこととは、何だったのでしょうか。

―田中
近年はSaaS事業が流行していますが、正直、SaaSは儲かりづらいと思っていました。
SaaSは基本的にBtoBのビジネスですが、日本における企業数は減っているため、市場は縮小傾向にあるんです。そのうえSaaSは、LTV(生涯顧客価値)の高さを見込む代わりに月額料金を下げている。未来にはそれが価格競争になっていくため、売上の拡大は期待できないのではないかと思っていました。
Saasとは:
Software as a Serviceの略。主にクラウドで提供される、サービスとしてのソフトウェア。

しかし、SaaSの流行が日本企業のデジタル化を後押ししているのも事実です。そこで田中さんは、新たなビジネスモデルを考案しました。

―田中
大事なのは、SaaSを提供する企業も利益を上げられる事業モデルをつくること。ツールの料金が上げられない中で僕が注目したのは、日本人はモノよりも人に対してお金を払うという考え方が強いことです。

以前、田中さんが営業役員として携わっていたサブスクリプションサービスでは、解約の連絡が来たあとにそのクライアントを訪問し、直接お願いすると、継続してもらえることが何度もあったそう。

また、どのプロダクトも品質が似ている場合、最終的には営業担当者との関係性により購入を決めることが多くあります。あの人に営業されたから買ったという経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。

―田中
それならば、ツールとセットでツールの運用を行うコンサルBPO(業務プロセスのアウトソーシング)を提供しようと考えました。
コンサルとして人が介入することで、よりお金を払ってもらいやすくしたんです。
しかし単なるBPOであれば他社のツールと当社を二重に契約しなければならないため、自社でもツールを開発し、ツールとセットで利用してもらえるようツールの料金は0円にしたんです。

ツールは簡単に乗り換えられますが、関係性はそう簡単に切れないのが人の性。勤務する会社が変わっても顧客や部下が付いてくるという田中さんご自身の経験も、事業モデルに反映されています。

―田中
顧客であれば、モノを売る相手として付き合っているのではなく、その相手の成長に貢献しようと考えて関係性を築いていることがいいのだと思います。
部下であっても同じように、部下だから関わるのではなく、その人そのものの成長に目を向けるようにしています。人で売るという意思決定をしている時点で人が付いてくるし、相手も人として評価してくれるんです。

目先の利益ではなく、その先にある相手の成長に目を向ける姿勢が、「田中さんに付いていきたい」と思わせる所以なのかもしれませんね。Marketing-Roboticsの事業モデルそのものが、田中さんの生き写しのように感じられます。

起業に不可欠な2つの軸

―起業しようとするときに、絶対に必要だと思われる要素は何でしょうか。

―田中
まずは、事業モデルをしっかり考えることです。それが考えられないのなら、はっきり言って起業はやめた方がいい。
人生をかけてでもやりたいと思える事業モデルがないときは、たくさんの人の話を素直に聞き、上場している会社の有価証券報告書や国の統計などを読み込み、事業モデルを練ってください。
そしてまた人に会って話を聞き、さらに練る。それが、起業前にするべき準備です。

起業家は人生をかけてやりたいと思えるビジョンがある人ばかりだと思われがちですが、実はそうではないと田中さんは言います。現に田中さん自身も、ゼロから事業モデルを練っていったそうです。

―田中
事業モデルが定まったら、次はその実現、つまり起業に向けてタスクを粛々とこなしていくのがふたつめの要素です。
それは、優秀なビジネスパーソンであれば誰もができること。起業だからと言って特別なことをしようとする必要はなく、それまでビジネスパーソンとしてやってきたことを、同じようにやっていけばいいだけなんです。

たしかに、目標を定め、それに向かって粛々とタスクをこなすと考えれば、それが起業であっても何ら特別なことではないと感じられますね。

―田中
事業モデルとの両軸で必要な要素は、販売力です。いくら世の中に価値のある事業モデルだったとしても、販売力がなければお客さんを呼び込むことはできません。

田中さんが23歳で初めて会社を辞めて独立したときに、苦労したのはまさに販売だったと言います。そして試行錯誤した結果、Marketing-Roboticsの提供サービスにも反映されている考え方に行き着きました。

―田中
その人がモノを買うかどうかのヒントは、プライベートな情報の中にあります。そこで、個人的な情報を入手すればノートに書き込み、情報が溜まればその顧客はAランク、溜まっていなければCランクとします。営業のアポイントは、Aランクの人から取っていくんです。

通常は、営業担当者から見て購入意向が高そうであればAランク、アポイントを取っていなければCランクなどとしがちですが、どれだけプライベートな情報を集められるかが、契約成立のカギになるのですね。

企業の魅力、人の魅力、地方の魅力を発信したい

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

―田中
Marketing-Roboticsは、自社の魅力を世の中に広められていない、そもそも自社の魅力に気づいていないという会社に対し、マーケティングをサポートできるような人材を増やしたいですね。さらにその先には、上場もしたいと思っています。
また、今年の夏には採用に特化したMA(マーケティングオートメーションツール)もリリースする予定です。採用においても同じように、テクノロジーで人や企業の魅力を見つけ、伝えられるようにしたいとリクルーティングオートメーション(RA)と名付け、「リクロボ」というサービス名で展開を考えているんです。

では、個人としてはどのような展望をお持ちなのでしょうか。

―田中
個人としては、実家が田舎なので、田舎を創生したいですね。
これも魅力を発信するという意味では事業と同じです。今は観光資源の有無のみが地方創生のポイントになっていますが、観光資源がないところにも人を呼べるようにすることを考えています。

とてもスケールの大きな話に驚きましたが、営業マンとして人や企業の魅力を見つけ、成長に貢献してこられた田中さんならではの目標だと感じました。

田中さん、お忙しいなかありがとうございました。

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