Story #1
突然の役員招集。そこで社長が掲げたのは...
2011年当時、ビジョン代表取締役の佐野は、国際的な起業家の組織であるEO(Entrepreneurs' Organization)の、日本における第14 期の会長として海外各国を飛び回っていた。その佐野が、初夏にある海外視察を終えて帰途に着く直前、ビジョンの経営幹部に向けて、緊急経営会議の招集をかけた。
佐野は海外のモバイルインターネット環境について、その高額な通信コストと国内に劣る通信速度に不満を持っていた。より安く、より快適、より便利にという国内の通信事業の進展に関わってきた自負から、新規プロジェクトを立ち上げ、この問題を自分たちで何とかしたいと考えたのである。
S.S
その時の経営会議で社長が話したのは、海外でも快適でリーズナブルなインターネット環境を提供する新規事業を立ち上げるという宣言でした。現在のグローバルWiFi事業の原型である、各国の通信環境に合わせたWiFiルーターをレンタルするというビジネスモデルが示されたと聞いています。
その後、7月にプロジェクトメンバーが集められ、私が新事業の営業担当部長として任命されたのです。
S.K
7月にプロジェクトに招集され、事業の概略の説明を受けた時、いよいよ本格的なグローバルビジネスに参入するのだと、身震いしました。私は留学経験があり、英会話には多少の自信があったので、具体的にどんな仕事をするのか分かりませんでしたが、自分の力を最大限に発揮したいと思いました。
K.Y
私はプロジェクトメンバーに任命される直前まで、固定電話回線の営業を担当しつつ、国内のWiFiルーターレンタルサービスも扱っていましたが、この新事業のスケール感や立ちはだかる壁の大きさは想像さえできませんでした。それでも、集まったメンバーの意気込みを見て、ぜったいに上手くいくという確信を持ちました。
S.S
8月にビジョン全社の課長職以上が東京に集められ、正式にプロジェクトが発表されたのですが、誰もがこれは面白そうだと感じたようでした。それから、全社員にこの話が伝わり、会社全体がこの話題で持ちきりでした。
Story #2
海外に一斉に散ったプロジェクトメンバー
7月に集められたプロジェクトメンバーが以前の持ち場での引き継ぎ作業を終え、本格的に稼働を始めたのは8月に入ってからだった。メンバー各人は新たに秋葉原のオフィスビルに移り、総勢20名の精鋭たちによるグローバルWiFiプロジェクトの幕が切って落とされた。
S.S
我々に与えられたミッションは、お客様自身のスマホやPCを世界中で使えるようにするビジネスの確立です。そのために、滞在国仕様のモバイルWiFiルーターを、第一に日本から海外に渡航するアウトバウンドのお客様へ、第二に海外から訪日されるインバウンドのお客様へ、さらに第三には外国から外国へ渡航するお客様へレンタルするサービス体制の確立を目指すところとし、調査チームが発足しました。
S.K
競合も、数社ありましたが、海外用携帯電話をレンタルするサービスを軸にしていました。我々がモバイルWiFiルーターに特化したのは、お客様が普段使っているアプリやデータが入っているご自身のスマホやタブレット端末、PCを割安の定額料金で使いたいはずだと考えたからです。
K.Y
こうしたゴールのイメージは共有していましたが、秋葉原に集まった初日は何から手をつけて良いか分からず、みんな世界地図を眺めているような状況でした。それから事業の基礎情報となる全世界の空港、航空機の就航便名、各国の出入国者数のデータなどを調べ始めました。そして、空港や就航便、及び出入国者数を調べるチーム、各国の通信キャリアとそのサービス内容を調べるチーム、営業先を想定して開拓するチーム、Webシステムの構築チームと、手分けして作業を進めるようになりました。こうしたチームワークは、ビジョンらしさだと思います。
S.S
そして基礎情報が固まった秋に、メンバーは一斉に海外各地に散らばりました。担当する国やエリアで実際に携帯端末やWiFiルーターを複数のキャリアから購入し、様々な場所を訪れてサービス品質を調べたり比較したりしたのです。それをみんなが社内SNSにアップし共有していくことで、サービス開始に向けての貴重な情報が全世界レベルでどんどん溜まっていきました。
Story #3
誰も手をつけていないマーケットを開拓
20名のプロジェクトメンバーの大半が世界各国に出向き、現地でサービス品質の調査をしたことには、何でも自前でやってみるというビジョンらしさの現れと言える。ほとんどのメンバーは数週間の長期出張で帰国してきたが、中には現地での確認や処理案件が積み重なり、6ヶ月の長期出張となるメンバーもいました。
S.S
我々プロジェクトメンバーは、まったく新しい事業を立ち上げる高揚感で、何でもやってやろうという意欲に満ちていました。日本国内で長く通信サービスに携わってきた自負として特に注視したことは、各国の通信回線を取り扱うにあたり、あくまでも現地法に沿った運用で、現地パートナーとなる通信会社にも貢献でき、持続性の高いビジネスを作り上げることです。
S.K
各国の通信キャリアとも、個別に正式な契約を結びました。その交渉も、それぞれの国で担当のプロジェクトメンバーが取りまとめ、社長自ら通信キャリアに出向き契約をしていました。先方にも利益をもたらすサービスですから、商談はスムーズに進みました。ただ、こちらとしてはお客様に格安でサービスを提供したい。ですから、ビジョンからキャリア側にお支払いすることになるサービス利用価格の設定交渉には、いずれのエリアにおいても力が入りました。
S.S
そうして各国のキャリアと正式な契約を結ぶことにより、キャリアが導入する新たな通信方式への、グローバルWiFiの対応などもスムーズになります。我々は持続的なビジネスを指向し、マーケットを開拓していったのです。
Story #4
グローバルWiFiは瞬く間に成長、ビジョンの新たな柱に
2011年が終わりに近づく頃には、主要な国やエリアのキャリアのほとんどと契約を終えていた。レンタルするルーターの調達も、現地のものを使用すれば良かったので、時間はかからない。だが、ビジョンはサービス品質に強くこだわった。お客様が納得・満足できるサービスでなければ普及できないと考えたからだ。
K.Y
2011年の年末から2012年の1月にかけて、ビジョンの既存のお客様の中で海外出張をする方を対象に、3000名の無料モニターによる実証試験をさせていただきました。その期間で不具合や不明点をクリアにし、サービス開始の最終準備を行いました。
S.K
そうした検証やテストを経て品質を高め、プロジェクトがスタートしてから約半年後の2012年2月に、まずは主要40カ国を対象とするグローバルWiFiサービスをローンチしたのです。
S.S
当プロジェクトにおける国内営業の責任者として、この新サービスの手応えは大きかったですね。今までビジョンは中堅・中小企業を対象とするビジネスが大半を占めていたのですが、自社商材であることで自由に営業できるこのサービスによって、大手企業に食い込むことも可能になったのです。実際に、大手の商社やメーカーとの多数の取引につながりました。
また、旅行代理店に働きかけ、店舗でお客様にグローバルWiFiを紹介してもらったり、ツアーパンフレットの旅行商品のオプションサービスに組み込んだりしてもらうことで、一般ユーザーへの拡販も進んでいます。
K.Y
大手企業のイントラネットに、出張者向けのグローバルWiFi申し込みページを設けさせてもらうなど、ユーザー拡大のための数々の施策が成功しています。また、お客様が利用された声は、WiFiルーターをお客様に受け渡しさせていただく空港のカウンターやコールセンターに寄せられ、それがサービス品質の向上につながっています。
S.S
ローンチ以降、グローバルWiFiは瞬く間に実績を伸ばし、現在では世界200以上の国と地域にてご提供できるようになり、さらには150万人以上のお客様にご利用いただけるサービスとなりました。既に、グローバルWiFi事業はビジョンの新たな柱となるまでに成長したのです。
Story #5
理想の提供に向けてプロジェクトは続く
日本から海外へ向かう渡航客の間でグローバルWiFiの認知度が向上し、ユーザー数は今も急速に拡大し続けている。多くのユーザーがリピート客として再度利用をいただくケースが多いことも、事業規模の拡大に拍車をかけた。また、折からの日本へのインバウンド客の増加も、追い風となっている。台湾ではプロモーションが浸透し、韓国やハワイでは現地の空港に出した店舗を利用するユーザーが増加中である。
S.K
インバウンドもアウトバウンドも、Other to Otherの利用も、まだまだ拡大中です。現在はさらなるサービス品質向上を進めると共に、グローバルWiFiのブランディングに注力し、多くのお客様に支持される圧倒的なシェアを追求しています。
K.Y
国境を超えるインターネットサービスとして、デファクトスタンダードのポジションを狙っているのでそれに向け、Web担当としてはトップページのリニューアルやエントリーフォームの改善、ユーザーの属性別に最適化したページ設計、顧客企業に向けた専用ページの普及など、次々と手を打っているところです。
S.S
我々の目標は、最高のサービスでインターネット利用における国境の壁をなくすことです。それには価格面をまだまだ改善しなければならないと考えています。このプロジェクトには挑むべき壁がまだまだたくさんあるのです。