中小・ベンチャー企業で働き方改革に取り組みたいと考えても、耳に入ってくるのは大手企業の事例ばかりで、中小企業にとってはなかなか参考にできないということも多いのではないでしょうか。
人事評価サービスの提供やコンサルティングなどを行う株式会社あしたのチームは、「あしたの人事評価アワード」を2016年から毎年開催し、自社の顧客である中小・ベンチャー企業の働き方改革事例を表彰してきました。
そこで、同社代表取締役社長CEOを務める赤羽博行さんに、近年の中小・ベンチャー企業における働き方改革の傾向や、具体的に働き方改革をどのように進めればいいのかといったテーマについてお話をうかがいました。
全国の企業の成功事例が聞ける「あしたの人事評価アワード」とは?
―まず「あしたの人事評価アワード」について、概要をお聞かせください。
「あしたの人事評価アワード」は、中小・ベンチャー企業同士の働き方改革についての情報交換を目的に開催し、今年で3回目になります。
毎年「給料アップ実現」や「生産性向上」、「採用力向上」などのさまざまな部門を設け、当社のお客様の中から世の中に発信していくべきだと考えられるすばらしい取り組みに対し、表彰を行っています。
今年は受賞企業に対しどのような目標を掲げてどのように取り組んでいったのかをインタビュー形式で掘り下げ、来場者の方々が自社の参考にできるようにしました。
また、アワードで表彰した企業の事例を毎年冊子にもまとめ、顧客である中小・ベンチャー企業の経営者や、あしたのチームが提供する人事評価サービスの導入を検討している企業に配布し、喜ばれているそう。
来場者数は年々増えており、最近では人事評価への取り組みで生産性や業績が上がった事例を聞きたいと、当社とは接点のないお客様にもお越しいただいています。
閉会後には、表彰された企業の方に直接お話を聞かれている方もいらっしゃいました。
また、受賞企業は全国から集まっているので、全国さまざまな企業と情報交換できるいい機会にもなっているようです。
間接部門の目標も数字で定量的に設定する
―働き方改革について、近年の中小企業にはどのような傾向があると思われますか。
成果が出ている企業は、社員に対して覚悟を持って向き合っていると感じます。
小さな企業であれば社長がワンマンで社員の評価を行っているところも珍しくない中で、新しく人事評価制度をつくって社員に納得してもらいつつ浸透させていくためには、時間もコストもかかる。
それができる経営者は人材に対するリテラシーが高く、人材に関わる出費をコストではなく投資だと捉えているんです。
本業が忙しいからといって人事評価を後回しにせず、定期的に行動を見直すことが社員の成長につながり、最終的には業績アップにもつながっていく。人事評価の成果を業績につなげている経営者は、そのことを理解しているといいます。
では、具体的にはどのように評価を行っているのでしょうか。
営業部門であれば売上や受注といった定量的な目標が設定しやすいのですが、財務や人事、マーケティングといった間接部門と呼ばれるところは定量的な目標設定がしにくい。
我々はそういった間接部門も含めたすべての部門に、パフォーマンスを正当に測るものさしとして定量的な目標設定を行っています。
そして、次にそれを達成するのに必要となる定性的な目標を挙げていきます。
たとえば人事であれば、ある成果を上げられる人材を何人採用するといったことを定量的な数値目標として掲げ、その目標を達成するためにどうするべきかを考えて定性的な行動目標に落とし込みます。
定量目標や定性目標は部門によって異なることはもちろん、役職によっても変え、それぞれに合った指標を細かく設定するようにします。一人ひとりの社員に合ったものさしを用意することで、社員は正当に評価されているという実感が得られるようになるのです。
生産性を測るものさしを明確にすることがモチベーションアップに
―今後、企業の働き方改革はどのように変化していくと思われますか。
今後も労働人口は減少していくことから、生産性を上げるという流れは変わらないと考えています。ただ、今までは生産性を測る明確なものさしがない中で、働き方改革と称してただ「残業はするな」といった話ばかりが形式的に言われてきていました。
その結果、業務の内容は変わらないのに残業代がもらえず所得が減って、苦しむ人が増えました。
そこで今後大事になってくるのは、人事評価制度によって生産性のものさしを規定し、生産性の高い人がより評価されるようにすること。そして、残業が減った分浮いた賃金を、生産性の高い人に再分配する仕組みづくりです。
成果に対してしっかり評価をし、それを報酬に連動させていくことがモチベーションにもつながるのですね。
あしたのチームでは、人事評価サービスによって生産性のものさしを規定するためのサポートに今後も力を入れ、日本全体の中小・ベンチャー企業の生産性向上に貢献したい、と赤羽社長は話します。
さまざまな中小企業の事例をデータとして蓄積していることから、人事評価のトレンドを積極的に発信していきたいと考えているそう。
お客様が成功した事例を積極的にサービスに取り入れたいと考えています。そのため、PDCAを高速で回し、それを全国の支店にいるコンサルタントにすばやく落とし込むことを心がけています。サービス改善の速さは日本一かもしれません。
また、自社でできないことは他社でもできないと考えているので、まずは自社で取り組んでみて期待した成果が得られたものを、我々が手本となって展開していきたいと考えています。
教育、採用領域にもサービスを広げていく
―御社の今後の展望をお聞かせください。
我々は人事評価サービスの提供を通して、本質的には人材育成を行っていると言えます。生産性を上げるということは、人が何かを身に付けて成長することで実現すると考えているんです。
そのため、我々は人材育成のサービスを展開しているつもりで、今後は人事評価サービスのみならず、教育事業も含めて中小・ベンチャー企業の経営者の方々が本質的に抱えている悩みを解決できるサービスを展開していきたいと思っています。
どんなに生産性が上がっても、そもそもマンパワーが足りないといった人事課題も解決できるよう、将来的には採用に関するサービスを展開していくことも視野に入れているそうです。
インタビューを通して、働き方改革を進めるには、まずは生産性を正当に評価できる人事評価制度を整えること。そしてその目標を達成することによって成長を促す仕組みをつくることが大切なのだと感じました。
人事領域を取り巻く状況は日々変化していますが、高速でPDCAを回してサービスを発展させているあしたのチームには、今後も中小・ベンチャー企業の成長のカギを握る企業として大きく期待したいと思います。
赤羽社長、お忙しいなかありがとうございました。