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202008.06

働きながら休暇を取る「ワーケーション」とは?コロナ禍でも注目される新しいワークスタイルを解説

多様な働き方のひとつとして政府も推進するワーケーション。「ワーク」と「バケーション」を同時に実現するという発想は、一見、非現実的にも思われるかもしれません。

具体的に、ワーケーションは企業やその従業員にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。また、実際に成果を上げることはできるのでしょうか。国内の先進事例を交えながら解説します。

ワーケーションの定義と背景~働き方改革からコロナ対策まで


ワーケーション(work + vacation)は、冒頭でも紹介したとおり、働きながら休暇を取ることを意味します。

とはいえ、従来のように「休暇を取ったものの、やむを得ず、休み中に持ち帰った仕事をする」というものではありません。あくまで社内制度のひとつとして休暇と仕事を並行して行うのが、ワーケーションのポイント。有給休暇と同じように、希望する従業員がワーケーションを会社に申請し、承認を得たうえで、通常の勤務先や自宅以外の場所での休暇を楽しみながら仕事をする、という仕組みで運用されます。制度化されている分、仕事と休暇のメリハリをつけられそうですよね。

ワーケーションの考え方が登場したのは2000年代。有給休暇取得率の低いアメリカを中心に、休暇取得を促進する目的で生まれました。日本でも、2018年に働き方改革関連法が成立し、企業に対して全従業員*の年次有給休暇の年5日取得が義務化されたことをきっかけに、ワーケーションに注目が集まるようになっています。

また、日本のワーケーションは、地方創生の文脈で語られる場合が多いのも特徴です。受け入れ地域における交流人口増加や観光ビジネスの活性化、地方移住の促進などが期待されており、2019年11月に設立された「ワーケーション自治体協議会」には、現在約90の自治体が参加しています。企業がワーケーションを導入する際にも、こうした自治体と協力して実施するケースが少なくありません。

さらに、2020年7月には、環境省がコロナ禍における観光地支援を目的に、国立公園などでワーケーションを行う事業に補助金を支給することも決定されました。都心のオフィスに従業員を出勤させることが難しくなっている企業にとっても、今後、ワーケーションが新たな意義を持つようになるのかもしれません。

*法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての労働者

ワーケーションを導入する意義は?企業・従業員それぞれへのメリット


ワーケーションは、導入企業やその従業員にとって、次のようなメリットがあると考えられます。

●【企業】職場の魅力が向上し、優秀な人材確保や企業の生産性向上につなげられる
ワーケーションの導入によって、従業員の有給休暇取得を促進できるとともに、柔軟な働き方を実現することが可能です。職場としての魅力をアップさせられれば、優秀な人材の確保・定着にもつながります。
また、従業員の満足度向上や心身の健康増進にも効果が期待できます。その結果、従業員のモチベーションがアップすれば、企業全体の生産性向上にもつながるでしょう。
さらに、働く環境の変化により、イノベーションにつながるようなクリエイティブな発想が生まれやすくなるという意見もあります。

●【従業員】ワークライフバランスの実現、バケーション先での自己投資も
ワーケーションを活用することで、より柔軟に働けるようになり、ワークライフバランスを実現しやすくなります。「休みたいけど休めない」「休んでも結局、仕事をしないといけない」といった悩みから解放されれば、QOLは大きく向上しそうですよね。
また、バケーション先で自己実現に向けた幅広い活動ができるようになる可能性もあります。趣味の活動はもちろん、スキルアップのための学習や、副業・複業など新たなキャリアに向けた活動、ボランティア活動など、勤務先や自宅から離れた場所にいるからこそできることも多くありそうです。

一方で、労働時間管理や、リモート環境におけるコミュニケーションの円滑化、セキュリティ確保、そのためのITインフラ整備など、導入には解決すべき課題が多いのも実情です。

国内企業のワーケーション成功事例2選~業績向上や残業時間削減の成果も


国内におけるワーケーションの導入率は約15%と多くはありませんが(『日本の人事部 人事白書2020』)、一方で、すでにワーケーションの取り組みを成功させている企業も見られます。ここでは2つの事例から、ワーケーションの導入・運用のヒントを探ってみましょう。

●セールスフォース・ドットコム
セールスフォース・ドットコムの日本法人では、2015年10月からワーケーションを実施。和歌山県白浜町にサテライトオフィス「Salesforce Village」を設け、約10人の従業員が3カ月ごとの入れ替わりで、ワーケーションを経験できる仕組みを整えています。

同取り組みは、総務省による「ふるさとテレワーク」の実証実験のひとつとしてスタート。半年間にわたる実証実験期間では、サテライトオフィスに勤務する従業員はインサイドセールス業務に従事しました。その間、従業員は東京のオフィスとまったく同じ業務を行っていましたが、労働時間を平均で月64時間/人も短縮しながら、同時に商談件数20%増、契約金額31%増を達成。驚くような生産性向上を実現していますよね。

また、労働時間の削減分で創出された個人の時間は、海岸の清掃活動や、地域の子どもたちに向けたプログラミング教室の運営など、地域との交流にも充てられているとのこと。地域コミュニティにメリットが波及するのはもちろん、地域で活動する同社の従業員にも、新たな気付きをもたらしそうです。

●日本航空(JAL)
自社の旅行商品としてもワーケーションツアーを提供しているJALは、2017年にワーケーションを導入しています。

同社のワーケーションは、「休暇」をメインに据えているのが特徴です。たとえば、2018年、鹿児島県徳之島町と富士ゼロックス鹿児島が企画した「徳之島ワーケーション実証事業」に参画した際には、3泊4日のワーケーション期間のうち、従業員が勤務したのは2日間で、それぞれ半日程度。残りの時間は観光や地域の人たちとの交流を楽しんだといいます。

運用面では、勤怠システムをワーケーション管理に対応できるよう改修するなど、インフラを整備。また、ワーケーション制度の利用促進のため、役員も積極的にワーケーションを実施したり、イントラネットにワーケーション向けのコンテンツを公開したりといった工夫もしているそうです。

取り組みの結果、同社では有給取得率が向上し、時間外労働も月7.9時間/人まで削減できたといいます。今後は、出張時に休暇を取れる「ブリージャー」の浸透にも取り組んでいくとのこと。旅行関連企業として、社内の取り組みが事業展開にも好影響を及ぼしていきそうですよね。

おわりに

企業の生産性や従業員のQOLを向上させながら、地方創生にも貢献できるワーケーション。コロナ禍で新しいワークスタイルが模索される中、ワーケーションへの関心は一層高まっていきそうです。「休暇を取りながら働く」という、一昔前までは到底考えられなかった働き方が、誰にとっても身近なものになる時代も、そう遠くはないのかもしれませんね。

※参考URL
ワーケーション(わーけーしょん)とは – コトバンク
拡大するワーケーションの可能性と課題・コラム – JTB総合研究所
ワーケーションに期待と課題 「旅行兼仕事」コロナ禍受け拡大- SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト
国立公園のワーケーションなどに補助金 雇用維持へ 環境省 _ NHKニュース
ワーケーション自治体協議会(Workation Alliance Japan) _ Facebook
テレワーク導入率は44.8%。ワーケーションなど多様化の兆しはこれから【人事白書】 – 『日本の人事部』
「働き方改革」最前線 Vol.3 Salesforce流働き方改革
サテライトオフィス成功の秘訣はOhanaカルチャー。セールスフォース・ドットコム白浜オフィスに学ぶ _ My Desk and Team
JALが取り組む「休暇+業務=ワーケーション」と「出張+休暇=ブリージャー」【「ワーケーション・スタートアップ!」フォーラム】 – INTERNET Watch
JAL、徳之島で「ワーケーション」実証 目前の海で「自由な発想」-Aviation Wire
仕事+休暇=「ワーケーション」、JALが実証事業報告会を実施 富士ゼロックス鹿児島、徳之島町と共同で観光と業務の両立を実現 – トラベル Watch
「ワーケーション」がJALを変えた。地域と出合い、自分を見直す働き方 _ スーモジャーナル – 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
「ワーケーション」という働き方のメリット・デメリット、和歌山県やJALの事例まとめ _ Beyond(ビヨンド)
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