2014年にリリースし、現在8万社に導入されている予約システム「Coubic(クービック)」。クラウドサービスとして安価な月額料金で始めることができ、一般消費者向けにサービス業を行う個人や小規模事業者を中心に利用が拡大しています。
最近は大企業からの問い合わせも増えているという同サービス。利用拡大の背景には、ある差別化戦略がありました。「クービックは単なる予約システムではない」と語る同社代表取締役の倉岡寛さんに、事業拡大の手法や目指す方向性についてうかがいました。
クービックは、売上があがる予約システム
―まず、クービックのサービス内容をお聞かせください。
“人々の生活から、「めんどくさい」をなくす”というミッションのもとに、一言で言えば、売上があがる予約システムを提供しています。
予約システムと聞くと、予約の受付や管理まわりが効率化され、業務負担が減るというイメージが浮かぶのではないでしょうか。
もちろんそういった機能もありますが、実は、クービックのサービスはそれに留まりません。
クービックを導入いただくような事業者の方、特にサービス業の方は、ヨガやマッサージ、フィットネスといった本業のかたわらで、予約管理はもちろん、顧客のアフターフォローや会計、宣伝のためのチラシ制作など、さまざまな雑務に追われています。
当社の予約システムはこれらの業務を効率化したうえで、さらにその一歩先、予約管理をすればするほど新しいお客さんが増えていくという状態を目指しているんです。
新しいお客さんが増えるとはすなわち、クービックを使うことによって一般消費者とのタッチポイントが増えるということ。
たとえば、とある事業者の方がクービックを使い始めると、その事業者が提供しているサービス専用の予約ページがネット上に公開されます。
まず、このページ自体が集客力を付けてきており、Googleの検索結果で上位表示されやすくなっています。
そのほか、クービックを利用している事業者のサービスをまとめた予約サイトへの掲載や、クービックのアプリを介した既存顧客とのコミュニケーションも行えるようになります。
なかでも特筆すべきは、Googleとの連携だといいます。
当社はGoogleの正式なパートナーとして、「Googleで予約」というサービスの開発を行っています。
これはGoogle検索やGoogleマップから直接予約できるサービスで、現在可能なのは飲食店の予約のみ。
そこでクービックは、主にフィットネスやヨガスタジオなどのウェルネス分野において、クービックが所有している予約の空き枠情報をGoogleに提供することで、Googleから直接予約ができるようになることを目指しています。
Googleから予約サイトへの検索流入のみならず、Googleで直接予約ができるというのは、非常に強力なタッチポイントです。
事業者はクービックの予約システムを利用することで、これらのタッチポイントがすべて持てるようになるというわけですね。
徹底的な顧客主義が、自社の売上にもつながる
―サービスをリリースされてから、どのように利用を拡大してこられたのでしょうか。
予約システムを求めて来られた方には、予約管理ができるだけでなく消費者とのタッチポイントも増やすことができるとお話しすると、興味を持っていただけます。
多くの事業者さんは、一般消費者に自社のサービスをアピールする手段として、大手の予約メディアに高額の広告費を支払って掲載してもらっているのではと思います。
しかしクービックの場合は、何十万という広告費を使うことなく、既存のお客さんを大事にしていればクチコミの投稿によって検索結果の順位が上がり、自然検索で新規のお客さんが増えるようになっています。
クービックでは、使えば使うほどこの仕組みの良さを実感してもらうことができており、最近ではクチコミで評判が広がることによって利用者が増えているそうです。
無料で使えるフリープランも用意しているので、評判を聞いて試しにお使いいただき、気に入って課金していただくケースが多いですね。最近は大手企業さんからもお声がけいただき、直接商談をさせていただく機会も増えてきました。
営業とは別に、カスタマーサクセスに力を入れていることも、既存顧客の継続利用に寄与しているといいます。
単に問い合わせを受けてそれにお答えするだけでなく、我々の方から「何かお困りのことはありませんか」と、積極的にアプローチしています。当社のサービスのようにSaaSと呼ばれている領域は、お客さんの成功が自分たちの成功にもなる。反対にお客さんのことを思わなければ、すぐに解約されてしまいます。真にWin-Winの関係を築くことで、利用の継続を促すことができるうえ、より高単価のプランに移行していただいたり、ほかの事業者さんにご紹介いただいたりすることができるんです。
メッセージ性を強く打ち出し、新たなクライアントの獲得を
―予約システムや予約メディアなど、予約サービスを提供している企業は多くありますが、なかでもクービックのサービスの位置づけをお聞かせください。
システムインテグレーターが提供するような業務効率化を促す予約システムと、某大手企業が保有するお客さんを集める予約メディアという両方の要素を持ち、予約システムを使っていれば予約メディアと同じ利点も得られるような仕組みであるということが、クービックのオリジナリティだと考えています。
こういった方向性を明確に打ち出せるようになったのは、ここ1~2カ月のことだと倉岡さんは言います。
それまではプロダクトアウトの形でさまざまな機能を付加しながら、自分たちのサービスの独自性について考え続けていました。
事業者側の一番の課題は、業務効率化ではなく集客です。
我々は予約システムですが、エンドユーザー向けのタッチポイントがたくさん用意できるという点で、我々だからこそできることがあるのではないかと考えました。
そこで、我々の仕組みを使って本来の業務に集中してもらいさえすれば、新しいお客さんを呼び込めるということを改めて強く打ち出していこうと考えたんです。
方向性が決まってからは、これまで追加してきたサービスや機能を改めて整理することができ、新たな機能の追加を検討するときにも優先順位を付けられるようになったそうです。
クービックのサービスを利用したことがない事業者さんにも、クービックが単なる予約システムではないということを分かってもらうためには、これまで以上にメッセージ性を強く打ち出していく必要があります。
今後はクービックのホームページや、クービックが展開する予約メディアなど、すべてをリニューアルしようと思っているところです。
使えば使うほど売上があがるというのは、事業者にとって夢のようなサービスです。リニューアルをきっかけにサービスがより一層広まれば、利用する事業者が一段と増えるのではと楽しみになりました。
現在、「Googleで予約」ではウェルネス分野の開発を進めていますが、それに留まらず、あらゆる分野のローカルサービスを手がけていきたいと考えています。究極的には、ローカルサービス全般に対して集客や決済、業務効率化などをすべて解決できるような仕組みにしていきたいですね。
クービックは、一般消費者向けにも、自分がよく行くお店の会員証や予約などを管理できるアプリを提供しています。
今後はアプリを通じて一般のユーザー数も伸ばし、クービックのアプリを起動すれば分野にかかわらずいろいろなものが探せるようにしたいとのこと。利用がもっと広がれば、いち消費者としても便利になりそうだと感じました。
倉岡さん、本日はありがとうございました。