終身雇用が崩壊しつつあるといわれている日本。とはいえ、転職組はまだまだマイノリティな印象がありませんか?
新卒一括採用がいまだメジャーな日本は、転職事情も世界の国とは少々異なっているよう。今回は、世界の転職事情を比較してみましょう。
転職大国アメリカでは、転職サポートサービスも充実
アメリカには終身雇用という概念がなく、どの企業も通年で採用を行っています。そのため、スキルアップやキャリアアップ、収入アップを目的に転職する人が多いようです。
2014年の調査では、働く人の50%以上が転職を希望、20代にいたっては80%近くが転職を希望しているとされています。また、別の調査によると、アメリカでは18歳から46歳のあいだに、11以上(!)の仕事を経験するとか。なんと勤続年数半年未満という計算になります。
日本では勤続年数20年以上という人が23%。そんなに日本人からすると、「せっかく苦労して入った仕事をすぐに退職してしまうなんて……」ともったいなく思ってしまうかもしれませんね。
このように名実ともに「転職大国」のアメリカですが、一方で、アメリカで転職を希望している人の40%が、次の仕事に就るか不安を抱いているというデータもあります。転職に対して不安を抱くのは、日本人だけではないようです。
そんな不安を持つ転職希望者に対して、アメリカでは転職サポートサービスが充実しています。日本においては、無料で登録できる気軽な求人サイトがメジャーですよね。これに対してアメリカでは、転職サービスが有料であることが一般的です。有料である分、サービスは充実しており、職務経歴書の作成を手伝ってもらったり、個別で面接対策をしてもらったりできるほか、キャリアカウンセリングやコーチングまでしてもらえることもあります。なかでもアメリカにおいては職務経歴書が最重要視されるため、特に管理職以上の人たちは、職務経歴書の作成を、資格を持った専門ライターに依頼することも多いようです。
アメリカは転職大国であるからこそ、激しい転職競争に勝ち抜く必要があることが見て取れるようです。ビジネスにおいてアメリカをモデルにすることの多い日本でも、こんな時代が来るのでしょうか。
転職困難?!10歳のときに仕事が決まるドイツ
一方、ヨーロッパの経済大国ドイツは、長期雇用が根づいている国です。あるデータによると、勤続年数10年以上の人が40%にも上るとのこと。雇用が安定してそうで安心できそうですが、その内実はとても厳しいものです。
ドイツでは、教育システムと就職が密接に結びついています。ドイツでは6歳から基礎学校で義務教育を4年受け、そのあいだに進路を考えます。つまり、遅くとも10歳には将来の進路を決めなければならないということです。専門知識や技能を長期間で積み重ねられる点はメリットですが、子どもには少し荷が重いような気もします。
基礎学校卒業後は、将来就きたい業種や職種などに応じて、3つの選択肢から進路を選びます。
1つ目は大学進学を目標として高等教育を受ける、8年制のギムナシウムです。日本における中学校・高校に当たります。
2つ目は5年制の基幹学校で、職業訓練校の色が強い選択肢です。
3つ目は、職業訓練をしながらギムナシウムへの編入も目指せる、6年制の実科学校になります。この3つの選択肢のうちでどれを選ぶかによって、将来の職種や業種が変わってくるのがドイツの就職システムです。学歴や専門知識が重視されるのも、ドイツにおける就職事情の特徴といえます。
このように、ドイツではかなり早い段階からその人の専門が決まってしまうため、異業種や異職種の転職が難しいのが現状です。専門知識と技能を生かして安定した仕事ができそうですが、日本人からすると少し息苦しいかもしれませんね。
アジアで比較、日本は転職回数が昇進に影響する
日本をはじめとしたアジア諸国においては、転職はまだまだマイナーのようです。ある調査によると、平均転職回数は、インドネシア(1.64回)やマレーシア(1.59回)が多くなっています。ちなみに、日本人の平均転職回数はなんと0.89回、お隣の国・韓国の0.99回をも下回っています。
とはいえ、転職回数はそれほど大きな差が出ていないのも事実です。注目すべきは、転職によるキャリアアップへの影響でしょう。転職経験者が管理職になる確率が、転職未経験者と比べて違うかを調査したデータによると、日本においては、転職回数が多いほど管理職になりにくいという結果が出ています。
これに対して、たとえば中国やタイでは、転職未経験者よりも転職経験者のほうが管理職になる確率が高く、転職経験が多いほどその確率が上がっています。またインドネシアなど、転職回数が昇進に影響を及ぼさないという結果が出ている国もあります。
転職者が増えているにもかかわらず、それがキャリアアップにはマイナスになるというこの結果は、とても残念ですよね。転職者が自分のスキルをキャリアアップに直結できるようなシステムが、少しずつでも確立していけばいいと思います。
おわりに
いかがでしたか? 各国さまざまな転職事情がありますが、日本はまだ転職に後ろ向きなところがあるような気もします。転職は本来、スキルアップやキャリアアップのチャンスであるはずです。周囲の国のよいシステムを上手に取り入れながら、日本でも納得のいく転職ができるようになるといいですよね。
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