テクノロジーを駆使して人事領域の課題解決や効率化を図るHR(Human Resource)テックが注目を集めています。
市場としてのHRテックはスタートアップ企業が牽引しており、新たなサービスも続々と立ち上がり成長の一途をたどっています。
そんななかクラウド人材プラットフォームの「カオナビ」が、人材管理システム分野で2015年から3年連続でシェアNo.1を獲得。今年5月には導入企業数が1000社を突破したことが発表されました。
なぜカオナビは林立するそのほかのサービスを押さえ、多数の企業の支持を得ているのか。その理由を探るため、株式会社カオナビの執行役員である藤田豪人さんにお話を聞きました。
「組織の生産性を上げる」という設計思想
―まず、「カオナビ」はどのようなサービスなのでしょうか?
カオナビは、顔写真とともに名前や評価などの人事データが共有できる人材管理ツールです。
もともと創業者であり現社長の柳橋と現副社長の佐藤は、企業における人事データの扱いについて課題を感じていました。多くの場合、人材マネジメントに必要な人事データはオープンにされていません。
そのためマネジメント側は、逐一人事からデータを取り寄せなければなりませんでした。
オープンにすべき人事データを簡単に確認できるようにすることで、マネジメントを加速させ、組織の生産性を上げることを目指しているのがカオナビの特徴。
すべてが「組織の生産性を上げる」という思想に基づいて設計されているんだそう。
一見、顔写真とともに人事データが取り出せるだけのシンプルなツールにも思えますが、「顔と名前を一致させることでその人が持つ能力も想起しやすくなり、抜擢がしやすくなる」と藤田さんは語ります。
また、これはお客様発信の使われ方なのですが、全社員がカオナビで公開されている人事データを見られるようにしている企業もあります。
そうすることで、プロジェクト発足時に初めて顔を合わせるメンバー同士であっても、カオナビの情報によって会話のきっかけが生まれる。
スタートアップがスムーズになり、成果が出やすいという効果があるようですね。
人材管理ツールとしてだけでなく、社員同士のコミュニケーションのきっかけとしての効果もあるんですね。社内の空気も活発になりそうです。
まさに「生産性の向上」を実現するカオナビの人材マネジメント
―カオナビの社内ではどのような人材マネジメントを目指しているのでしょうか?
組織の生産性を上げるということは大前提として、そのための仕組みづくりを常に考えています。
社員が自分のポジションでしっかりと役割を果たすこともその一つ。
社員全員がプロとしてそれぞれの立場からしっかりと意見を言い合えるようにすれば、結果的に生産性は上がり、加えて企業として提供するべきサービスを正しくつくっていけると考えています。
カオナビは、毎日の残業時間がひとり当たり16分と、残業をほとんどしない企業でもあります。その事実は、カオナビが一貫して取り組んできた生産性向上への取り組みが奏功していることを窺わせます。
「定時で帰る」という意識は、もはやカオナビの美学ですね。カオナビの社員にとって定時は終電のようなもので、間に合わなければとても残念に思うような文化なんです。
この考え方の根本にあるのは、家族を持っている人や介護をしている人、副業をしている人や勉強をしたい人など、人によってさまざまな事情がある中で、カオナビでの仕事以外の時間を好きに使ってもらいたいという思いです。
そうすることで人間としての土台を広げ、ひいてはそれが仕事の幅をも広げてくれると考えています。
残業を減らそうと取り組んでいる企業は多い一方で、それを徹底することは難しいもの。
聞き進めていくと、カオナビには、残業をしない文化をつくるためのルールがありました。
カオナビでは、定時になると上司が率先して退社します。もちろんパソコンは持ち出し禁止。
社内でやりとりしているメッセージも、時間外は基本的に見ません。退社後はトラブル対応以外は仕事をしないというスタンスです。
その分、時間内で終わるよう、社内の業務調整もしっかりと行われています。
しかし裏を返せば、仕事の進みが遅ければそれだけこなせる仕事が減り、上げられる成果が少なくなるということ。
カオナビの評価は生産性を重視するため、社員は頭を使ってどのように生産性を上げるかを自然に考えるようになるのだそうです。
この文化は、人材の定着にも寄与しています。
当社には「またぎ飲み制度」というものがあり、部署をまたいだ飲み会には最高4000円の補助が出ます。定時で退社できれば、またぎ飲みを含めた飲み会も企画開催されやすくなる。
そして他部署の人と交流すると、会社の中における自分の役割やミッションが理解できるようになり、会社が何を言わなくても社員は自然に育成されていきます。
カオナビの考え方は、「本人が必要としていない研修はおこなっても意味がない」。
成果につながる成長を目指す人には勉強のためのサポートを行い、埋もれている人がいれば配置転換で活躍できる場をつくることで、社員全員が生産性を上げられるマネジメントを行っているそう。
このマネジメント手法で、2008年の創業以来10年間で退職者は9人。採用においても有利に働くことが多いのだそうです。
拡大するHRテックで、圧倒的ナンバーワンへ
―最後に、実は今年3月に入社したばかりだという藤田さんに、カオナビで成し遂げたいビジョンについて伺いました。
現在は管理本部の責任者を任されていますが、前職まではマーケティングや営業、商品企画などを経験してきて、管理系は初めてなんです。
しかし、声をかけてもらったときにまったく異なるジャンルに自分の伸びしろを感じ、挑戦を決めました。
市場という視点でも、HRテックは現在 成長期であることからまだまだ伸びると思いますが、最終的には数社のみが生き残っていくと考えています。
私個人のビジョンとしては、管理本部の立場から、カオナビがHRテック分野で圧倒的ナンバーワンになれるよう、過去の経験を最大限生かしながら事業を推進していきたいです。
HRテックを牽引するカオナビでは、サービスのテーマでもある「生産性を上げる」ことを自社内でいち早く体現し、成果につなげていました。
内実ともに人事領域の先端を行くカオナビが今後どのようにサービスを広げ、どのように生産性や働き方に変革をもたらしていくのか、期待が高まります。
藤田さん、お忙しいところありがとうございました。