近年、国内の成長企業がリファラル採用を導入している事例をよく目にするようになりましたよね。人事におけるさまざまな課題を解決できる手法として話題になっていますが、実効性や実現可能性に疑問を抱く人も多いかもしれません。
今回の記事では、リファラル採用が注目されるようになった背景や、同手法のメリットについて解説していきます。併せて、成功事例を見ながらリファラル採用の効果的な運用方法も探っていきましょう。
リファラル採用とは~採用難や人手不足を背景に注目が集まる
「リファラル(referral)」は英語で「紹介、推薦」を意味する言葉です。リファラル採用とは、自社社員の人脈を通じて紹介・推薦してもらった人材を選考し、採用する手法を指します。
いわゆる「縁故採用」と違い、明確な採用基準や選考フローが設けられているため、社員に紹介・推薦された人が必ずしも採用されるわけではありません。「紹介」とはいっても、あくまで公正でオープンな採用手法だといえるでしょう。
リファラル採用が国内で注目され始めたのは、2014~2015年ごろだと言われています。その背景のひとつが、有効求人倍率の上昇です。「待ち」の姿勢では、企業が要件に合致する人材になかなか出会えなくなっていることから、企業自ら人材を探しにいく「攻め」の姿勢のリファラル採用に対する関心が高まりました。
2017年に発表された『エン 人事のミカタ』アンケート結果によると、国内でリファラルによる中途採用を実施したことがある企業は62%。さらに、今後リファラル採用へ「前向きに取り組む」と回答したのは、リファラル採用導入済み企業で91%、未実施の企業でも30%となっています。
リファラル採用5つのメリット~コスト削減と採用効率アップがカギに
リファラル採用には、主に以下のようなメリットがあります。
企業文化や求める人材像、業務内容、そして仕事の魅力を熟知・理解している社員が人材を紹介する形であるため、外部の人材紹介サービスや転職エージェントなどを利用するよりも、マッチングの精度が高くなる可能性があります。その結果、内定率・入社承諾率の改善につながることが考えられます。
リファラル採用では、社員が個別に知人にアプローチしていくので、一見、採用効率が悪く見えるかもしれません。ですが長い目で見れば、より効率的な採用活動を実現できるのではないでしょうか。
●採用者の定着率向上
採用のミスマッチを防ぐことができれば、採用者の定着率向上にもつながります。すでに社内に知人がいて、不安も払しょくしやすいので、入社以降もより職場になじみやすくなりそうです。
●採用コストの抑制
採用効率の向上による長期的なコストだけでなく、採用活動にかかる短期的な外部コストも削減できます。求人広告の掲載費用、人材紹介サービスの紹介手数料などがかからなくなることで、企業によっては、採用単価を10分の1に抑えられたケースもあるそうです。
●転職潜在層にアプローチが可能
人材紹介サービスに登録したり、実際に求人に応募していたりする転職顕在層だけでなく、「いい企業があったら転職したい」と考える転職潜在層とも接触を図ることが可能です。転職顕在層と潜在層の比率は2:8と言われることもあるなか、8割の潜在層にアプローチできれば、他社と少ないパイを奪い合うことなく、求める人材を獲得できる可能性が高まりそうです。
●社員エンゲージメントの向上
知人に企業を紹介する過程で、社員自身が企業の理念・魅力や現在の業務内容、今後のキャリアなどを見直せることから、社員のエンゲージメント向上につながります。社員エンゲージメントの向上は、企業の生産性向上につながるともいわれていますから、人材確保以上の効果がもたらされることも期待できそうです。
国内におけるリファラル採用の主要導入事例~成功させるための運用のポイント
さまざまなメリットがあるリファラル採用ですが、せっかく導入しても、うまく運用できていないケースもあるようです。例えば、リファラル採用では、人材を紹介した社員に報奨金を出すことが一般的ですが、リファラルリクルーティング株式会社が2017年に実施した調査によると、「リファラル採用に報奨制度を設けたものの、実際には人材を採用できていない」と回答した企業が44.4%に上りました。
報奨制度だけでは紹介の「質」が確保できず、採用に至らないといった問題もあるようです。形だけ真似するのではなく、運用体制をしっかりととのえることが大切になります。
以下で、国内でリファラル採用を成功させている企業が、どのような運用上の工夫をしているか見てみましょう。
入社する社員の約6割がリファラル採用というメルカリは、2013年の創業ごろから経営陣によるリファラル採用を積極的に行ってきました。次第に、リファラル採用での入社者を中心に、社員による紹介も増えてきたといいます。
同社におけるユニークな取り組みのひとつが、少人数での社内外交流イベント「DrinkMeetup」。2015年から実施しており、企業や社員、仕事などを社外の人々に気軽に知ってもらうことを目的としています。このようなイベントがあれば、知人を紹介したい社員もイベントに誘う形で、リファラル採用に協力できそうですよね。
また、社員が採用目的で社外の人と会食する際には、わずか3行の事後報告だけでよく、金銭面のサポートも受けられます。リファラル採用に対する社員のハードルがぐっと下がりそうです。
●株式会社サイバーエージェント
2014年、リファラル採用などダイレクトリクルーティングを推進する全社横断の中途採用チームを作り、全社でリファラル採用を開始。現在では年間の採用実績全体の約30%がリファラル採用です。内定後の入社承諾率も7~8割と好調だと言います。
同社では、特に制度の社内周知に注力。社内報ではリファラル採用の紹介者と入社者にインタビューし、リアルな現状を伝えています。また、社員に配信されるメールには、応募後の面談形式や求人募集をしている部署などを明記し、紹介するにあたっての障壁を取り除いています。
さらに、リファラル採用ツールを活用し、社員による紹介から選考に至るまでのフローを一元管理したり、施策の効果を計測したりしているのも特徴です。従来の採用手法と同様、リファラル採用の運用においても、PDCAサイクルを回せる体制づくりが肝となりそうですよね。
おわりに
リファラル採用の導入に当たっては、社員に協力してもらえる仕組みをいかに構築するかが重要になるといえます。制度や文化の浸透には時間がかかることも考えられますが、最初は他の採用手法と併用しながら、少しずつリファラル採用を拡大するのがいいかもしれません。
今後リファラル採用の導入を検討する企業は、先進的な事例も参考にしながら、自社に合った運用方法を模索して、採用効率向上につなげられるといいですよね。
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