みなさんは、どのような目的で海外へ行くでしょうか?一度行った国でも、滞在した先で格別のもてなしを受ければ、もう一回リピートしたくなりますよね。
西武ホールディングスは2016年7月、西武鉄道やプリンスホテルなど、西武グループの施設を利用するときにお得な会員サービス「SEIBU PRINCE CLUB」の訪日外国人向けサービス「SEIBU PRINCE CLUB emi」を開始しました。これは、訪日外国人が西武グループの施設利用時に会員カードを提示すると、料金の割引やプレゼントなどの特典が受けられるというもの。外国人が日本を訪れる際に、西武グループの施設を使ってもらう魅力づけとして、サービスを展開しています。
サービス開始から約1年半。着実に会員数を伸ばしつつある同サービスの会員獲得施策、今後の展開などを、西武ホールディングスのカード担当マネージャーである福島伸恵さんにお聞きしました。
徹底したのは、直接の接点でのご案内
―西武グループとして初の訪日外国人向け会員サービスということで、ゼロから会員を獲得するためにどのような施策を行ったのでしょうか。
第一に、訪日外国人の方と直接接点を持てる、西武グループの施設利用時にしっかりご案内することで、サービスを知ってもらい、入会していただくことに注力しました。
また、自社グループ以外でもお客様との接点が持てるよう、ビジョンさんが提供する「NINJA WiFi」のサービス利用者に配布されるフリーペーパーや、ビジョンさんが運営する観光案内所「歌舞伎城」でもサービスを案内していただいており、少しずつ成果が見えてきているところです。
福島さんによれば、外国人にサービスを知ってもらうタイミングは、日本への渡航時が一番多いのだそう。そこで、渡航する前のお客様にも入会してもらえるよう、SNSを活用した広告や、旅行検索サイトに公式サイトへのリンクを貼ったり、海外で行われる旅行博に出展してサービスを案内しているとのこと。渡航前に認知していてもらえれば、渡航時の入会にもつながりやすいですよね。
また、「キャンペーン期間中の入会」や応募条件を「西武グループ施設での2000円以上のご利用」としたプレゼントキャンペーンを行い、入会促進はもちろん、すでに会員になられている方の利用促進も、グループ全体で取組んでいます。
今年2月からは特典サービスに加え、利用金額に応じてポイントが貯まるサービスも開始されます。継続的な利用や、ロイヤルカスタマーづくりへの大きな一歩になると期待しています。
サービスの役割は、西武グループのリピーターになってもらうこと
―会員獲得のための施策を行う中で、特に工夫されたことはありますか。
お客様へのご案内を徹底するうえで、他言語での説明に不安がある、ご案内している間はほかのお客様を待たせてしまうなど、さまざまな理由によって取り組みに積極的ではない施設もありました。
しかし「SEIBU PRINCE CLUB emi」のサービスが持つ役割は、お客様にグループ各社の施設をより利用してもらえるようにすること。その役割を最大限に生かすためには、各社が施設を訪れたお客様に対して「自社のリピーターになっていただく」という認識をしっかりと持ち、主体的に取り組むことが必要です。
確かに、トップダウンでいきなりこのサービスを紹介してと言われても、現場はなかなか動きにくいもの。西武グループでは、グループ各社と話し合い、サービスを案内しやすくするために各現場の事情や課題を捉えたうえで対策をおこなったそう。
たとえば、言語面に不安があるのであれば、4カ国語に対応した指差し案内表を提示するだけにする、サービスの説明に時間が割けないのであれば、ご案内チラシを1枚渡すだけにするといった工夫をしたんです。そうすることで「それならできる」と取り組んでもらうことができ、入会数の増加にもつながりました。
最近では、西武グループ全体のキャンペーン企画に各社がアイディアを提案するようになるなど主体的な姿勢が少しずつ見え始めており、手応えを感じています。
変化するニーズにしっかりと応え、選ばれる西武グループに
―今後、サービスをどのように展開していきたいと考えていますか?
モバイル化は早急に対応しなければならない課題です。モバイルアプリのWeChatやAlipayの利用が増加していることからも分かるように、お客様のニーズはカードレスへとシフトしています。今後はカードの代わりとなる専用のアプリケーションを用意し、変化するニーズに対応していくべきだと考えています。
また、「SEIBU PRINCE CLUB emi」のサービス開始により、お客様の国籍や年齢などの属性情報、利用施設や利用金額などの細かなデータが取得できるようになりました。蓄積したデータをしっかりと分析し、サービス内容の充実や、利用促進のための施策につなげていきたいと考えています。
外国人にサービスを使ってもらうためのインフラ整備が重要、と語る福島さん。これって、サービスや自社グループだけでなく、日本社会全体に言えることでもありますよね。改めて外国人の目線に立って日本を見ると、たとえば和式のトイレは使にくいなど、まだまだ細かい問題がある気がします。
そうですね。細かい不便をひとつひとつ解決してこそ、真のおもてなしだと思います。それと同時に、グループ内の施設にとどまらず、たとえば駅を中心とした観光エリアにも目を向けるなど、広い目線でインバウンド施策に取り組んでいく必要性を感じますね。
おわりに
「訪日いただいた際には西武グループを選んでいただけるように、お客様のニーズにしっかりと応えていきたい」と意気込むと同時に、女性ならではの目線で「さすがおもてなしの国だと思ってもらえるよう、細かなサービスの実現にも目を向けていきたい」とお話しされていた福島さん。
まだまだサービスは始まったばかり。オリンピックに向けてもそうですが、それに関わらず、訪日外国人が快適に過ごせる環境が、「SEIBU PRINCE CLUB emi」のようなサービスで実現すればいいですね。