IT業界にいる方なら、「オフショア開発はベトナムがアツい!」ということを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ベトナムにおけるオフショア開発は2012年ごろから注目を集めてきました。ベトナムにおけるIT産業の総収益は、2012年の254億ドルから、2013年には395億ドルに増加し、50%以上の増加率を達成しています。IT業界でのベトナム進出にはどんな魅力があるのでしょう。3つのポイントにまとめてみました。
【ポイント1】制度面での魅力
ベトナムにおいては、新設の外資企業が「特定のセクター」へ投資するプロジェクトに対して、法人所得税(CIT)の減免があります。「特定のセクター」には、ハイテク分野やソフトウェア開発分野などいわゆるIT部門が含まれています。
最初の4年間はCITが全額免除、その後なんと9年間も税額の50%が減額。
実質13年間も大幅な税制優遇を受けられる点は、オフショア開発を狙う企業にとって魅力的に映るのではないでしょうか。
さらに経済特区におけるプロジェクトについては、インフラ開発に対する支援も行われます。
代表的なものには、一定範囲内における技術的インフラの提供、経済特区の従業員が居住できる特区内の住宅賃貸といった支援などなど。
IT事業を展開するとなると特殊なインフラ整備は必須。そこに対する支援が充実しているのも助かりますよね。
【ポイント2】人材面での魅力
ベトナムにおけるIT産業従事者は2012年から2013年の1年間で、約35万人から44万人と、約1.2倍に増加しています。
以降も増え続ける見込みの高いベトナムのIT従事者については、ずばり、能力と日本と比較した場合の賃金水準とに特徴があります。
たとえばハードウェア部門における一人当たりの年間平均賃金(2013年時点)は2,301USドル(約25万円)。
これは中国やタイの同業種に比べてもだいたい1/2の水準となっています。
人材そのものは、とても水準が高く優秀だといえます。
ベトナムにおいては大学在学中に職業訓練的な教育も受けるため、新卒時にはすでにある程度のスキルを身につけていることが一般的。
プログラム言語の知識だけでなくプログラムの作成経験も有していることが多いため、入社後に基礎的な教育をし直す必要がないんですね。
即戦力になるとわかれば、慣れない海外の国にも安心して投資できそうです。
さらにベトナム人エンジニアには、英語力が高く、勉強熱心で勤勉という特徴もいわれます。
加えて、日本語習得者も多い。
日本人にとっては同じアジア人として親近感もわきそうです。
【ポイント3】市場としての魅力
ベトナムでコンピュータを持っている世帯は、2008年から2012年の4年間で、約2,200世帯から約4,300世帯と、2倍近くに増えています。
とはいえ、100世帯のうちコンピュータを持っている割合は2012年で18.8%。まだまだ拡大が期待できる市場です。
また経済成長の影響からか、若者の購買意欲が高い傾向にあるのだとか。
現在は3世代同居世帯が主要ですが、今後所得水準が上がれば、核家族も増えることでしょう。今後さらにITサービスなどの伸びが期待できそうです。
ベトナムIT業界に見られる変化
以上のような魅力を持つことから、ベトナムはオフショア開発の拠点として人気を集めてきました。しかし2016年ごろから、その状況に変化も見られているようです。
オフショア開発となると、ベトナム人は外資系の企業から「受託型」で仕事を受けることとなります。
ちょうど日系企業が「Made in Vietnam」の工業製品を作るのと同様。
とはいえ工業製品と違って、システムは目に見えるわけではありません。したがって、ベトナム現地の人たちは自分たちの作っているシステムがどのように収益に結びついているのか想像できないまま、仕事をしていることが多いそう。
ベトナム人も、もちろんその状況で満足しているわけではありません。IT業界に従事するベトナムの人たちの多くが、「将来ベトナム人によるシステムをベトナム人の手で」と考えている可能性は高いでしょう。
さらに人件費が上昇し始めているのも見逃せません。ベトナムにおけるオフショア開発は、いつまでもこのまま続けられるとはいえない現状になってきています。では、ベトナムにおけるIT開発は今後どうなっていくのでしょうか。
一部の人は、「今後はオフショア開発だけではなく、現地ベンチャーやスタートアップという形での進出もあるのではないか」と考えるようになってきています。つまりベトナム現地の人たちと一緒に現地法人として会社を立ち上げる方法です。ベトナム政府は国内のIT企業に対してもさまざまな支援を行っています。
今後、IT業界において日本とベトナムをつなぐ新しい展開が期待できそうですね。
まとめ
ますます発展を見せるベトナムIT業界。
オフショア開発だけでなく、今後は「日本からベトナムに移住してスタートアップを立ち上げた」という人の話題も出てくるかもしれませんね。
政府による制度支援についても引き続き注目したいところです。IT業界の方は日本国内だけでなく、ぜひ“ご近所”の国ベトナムにも視野を広げてみてはいかがでしょうか。
Viet nam Information and Communication Technology White Book 2014
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