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201803.15

インバウンドビジネスのプロ「ランドリーム」が考える、観光大国を目指す日本の近道

訪日外国人の増加にともない、インバウンドブームと言われているここ数年ですが、皆さんの会社でも「インバウンドやらなきゃ」みたいな使命感的なことはありませんか。

役員から「インバウンド対策どうするんだ!?」とか日々聞かれたりする事業担当者も多いのではないでしょうか。

といっても、どうすればいいのかノウハウも落ちていないのも事実なところ。

今回は、元トリップアドバイザーの代表で、現在はインバウンドビジネスのコンサルタントをしている株式会社ランドリーム 原田静織社長に、観光マーケティングにおいて重要なことを伺ってきました。

「戦術よりも戦略」からスタートすることが必要

―単刀直入にお聞きします。インバウンドビジネスをスタートするにあたって、何から考えたらよいのでしょうか。

―原田
インバウンドビジネスというと、WEBページを多言語対応にするとか、SNSをちゃんと立ち上げて運営します、といったことから取組む会社や地方自治体が多いんですけど、これはHow to ですよね。

そうではなくて、戦い方を決める前に、まず誰と戦うのか、何をしたいのか、を先に決めることが大切です。そこをいつも必ずヒアリングすることからスタートします。

たしかに・・・・・・何をしたいのか決まっていないで、ただWEBサイトを多言語化することに時間をかけても、無駄な工数となってしまいますね。

SNSを立ち上げても目的がはっきりしていなければ、どう伝えればいいのかも定まらないし、ファンになってもらえないコンテンツとなってしまいそうです。

基本的で簡単なことの話ではありますが、実はこれがないまま戦術を進めてしまうことが多いんだとか。

では、戦略を考えることで重要なことはなんでしょうか。

―原田
インバウンド施策にて私たちが日々ふれているデータは、日本に来られている外国人のデータが主だと思うのですが、それだけを見てつくった戦略は、間違っていることが多いです。観光大国を目指すには、世界中で旅行している人たちはいったいどんな人たちなのかを知ることが必要ですね。

日本に来られた方は世界中の旅行者の一部であって、一部特長のある方に偏っていることということに気づかないことがあるからです。

例えば、日本に来られる中国の旅行者って、クルージングでの旅行者、団体ツアーなことが多いですが、実際に中国から各国へ旅行される7割以上が、個人旅行者なんですよ。

日本に来られるお客様のデータばかりみてしまうと、中国の旅行者がすべて同じなんだと思ってしまいがち。

データをどのように捉えるのか、それは偏っていないか、などいろいろな視点が必要だというのは勉強になります。

観光大国となるには、世界的な旅行者ってどんな人たちなのか、トレンドを知ることが重要なんですね。

―原田
今、一番の旅行トレンドは「ミレニアル世代」と呼ばれている80年代90年代生まれの方々の旅行なんです。結構若い世代なんだと思う方もいるかもしれませんが、そこから更にひも解いていくと、世界の平均年齢も大きなヒントになります。

現在の日本の平均年齢は47才。世界の平均年齢は29才なんですよ。

こういうところから、考えていくことの軸が世界と差がでていることもありますね。

なので、世界の平均年齢と同じ世代の方々が、もっとインバウンドビジネスでも戦力となり活躍をしてほしいと思っています。

戦略を考えることは実は単純なことだったりする

―戦略を考えるポイントって、ずばりどういったことなのでしょうか。

―原田
難しい話に思われがちなのですが、「誰に、何を売りたいのか」で「いくらで売りたいのか」最終的に「どの位売れたらOKなのか」っていうだけの話なんです。
でも、実際いざやろうとすると、意外と簡単に出ないんですよね。

とにかく何が問題かというと、消費者が1つしか受け入れられない現状なのに「何を売りたいのかわからない」これも、あれもと「もっているもの全部売りたい」となってしまうからです。
別の言い方をすると、「この人にとってもいいメディア」「この人にとってもいいサービス」「この人にとってもいい商品」ってなってしまい、誰のためのプロダクトなの?となってしまい軸がぶれてしまいます。

国内外の経営者とたくさんの交流がある原田社長。
ある国の方は「私のビジネスは中国人だけをターゲットとしています」と、ストレートなことが普通に会話にでてくるんだとか。
逆に日本で多くあるのが、「欧米の方にもアジアの方にも買っていただきたい」っていう会話なんだそうです。
それって、風習の違いなのでしょうね。

観光大国を目指すことに重要なのは、3つの「D」である

―海外のマーケティングアプローチを融合し、独自に考えられた観光大国に重要な3つの「D」があるとのこですが、その3つの「D」を教えてください。

―原田
3つの「D」は、
◆独特な、際立った(Distinctive)
◆差別化(Differentiated)
◆望ましい、好ましい(Desirable)
です。
例えば、おいしい「お肉」を売りとしたい場合、どういったポイントをアピールしたら、他よりも多くの外国人に来てもらえるだろうということを、3つの「D」で考えてみてください。

お肉のPR写真を、腕のあるカメラマンに撮影してもらうことができ、美味しいそうに写っていることも重要ですし、「独特」ということにおいて、印象に残る写真が必要ということです。

お肉のランクも良いランクを取り扱っているということも「差別化」となりますよね。

また、このお肉ですが、「望ましい、好ましい」と思ってもらえるかということです。

日本のカタログに掲載されているのって生肉の写真が大半ですよね。

対日本人へのPRであれば、美味しそうに感じてもらうことができるかもしれませんが、国によって感じるポイントが違うんです。

海外の方からみたら、きれいな色で霜降りがある生肉の写真ではなく、すき焼きにして丁度ジュウジュウと焼きはじめた時の写真の方がうけがいいことが多いです。

なるほど、言われてみれば簡単なことかもしれません。

日本の習慣で自分たちがいいと思うものをそのままPRしたところで、それを外国人が見ても、どうやって食べるのかも伝わらないし、「これ食べたい!」とはならないですね。

―原田
また、習慣においてお話をすると、ポスターで観光地をPRすることも多いと思います。
日本人は、温泉があって、お祭りがあって、名物の食べ物があって、観光スポットの風景があってと、たくさんの写真が1枚に収まっているものを多く見てきていると思います。それで、想像がつくという習慣になっているんです。

でも、外国のポスターは、1つの写真で構成されていることが多いです。

たくさんの写真で構成されているものがダメだとか、間違っているということではなくて、海外の方々はシンプルな1枚写真のポスターに日々触れていて、そこから想像をする習慣となっています。

エモーショナルコネクション(お客様との感情的なつながり)は国によって、文化によって、実は大きく違っているということになるんです。

3つの「D」と自社の強みをクロスさせること

差別化しましょう!独自性をだしましょう!と方針が固まり、「じゃあ、御社の強みは何ですか」とヒアリングをすると、「うちの会社は加盟店が全国に○百店舗あります」とか、「強力なネットワークがあるとか、大手企業との取引実績もあります。」となることも大半なんだとか。

―原田
確かにそれらの強みは、その会社の強みではありますが、ユーザーからしてみたら強みとなるのでしょうか。3つの「D」は、すべてユーザー目線でなければ何も効果がうまれません。

ユーザー目線での差別化、ユーザー目線での独自性、ユーザー目線での楽しみというわけです。

自社の強みは、ユーザー目線で使うことが大切なポイントってことですね。

簡単なことをシンプルに考えること、「確かに・・・・・・」とうなずいて聞いていることばかりでした。
ユーザーが何を必要としていて、自分たちがそのユーザーに対してどのようなバリューが出せるのか、C to C目線で考えていくことも重要なんだと、とても勉強になりました。
原田社長、お忙しいなかありがとうございました。

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