『震災リゲインpress』 転載記事
27号 発行:2018年11月20日
「消防団」の具体的な活動や現状とは。いま一度、その存在と参加のメリットを考えてみましょう。
◎ 消防団と消防署の違い ◎
「消防団」と聞くと、どことなく昭和っぽくて、地方にしかないようなイメージを持つかもしれません。しかし、都市部を含む全国の市町村に消防団は配置されており、その数は現在およそ2,200。分団まで含むと、2万以上のチームが日本にはあるのです。
その名前から、消防署の関連組織だと勘違いしそうですが、完全なる別組織。消防署員には採用選考があり、常勤となるのに対し、消防団員はその土地に居住、もしくは勤務する18 歳以上であれば誰でも参加でき*、日頃は各々の職業に専念できる点でも大きく異なります。
◎ その歴史と、現代の活動 ◎
消防団のルーツは、江戸時代までさかのぼります。デレビ時代劇『大岡越前』の主人公としても有名な町奉行・大岡忠相が、江戸で頻発していた火事対策のために町人を組織化し、「町火消(まちびけし)」として消化・防火活動にあたらせたのです。
一方で、現代では高い知識と技術を持つ消防署がその軸足を担うなか、消防団の役割も次第に変化しています。火災発生時には、消防車の到着までの初期消火のほか、住民の安否確認をしたり、大切な家財道具を運び出したりします。さらに火災だけでなく、地震や水害などの際にも、さまざまな防災活動を率先して手伝います。同じエリアで暮らし、生活環境を共有する顔なじみだからこそできるサポートがあるのです。
ピーク時には200万人いた団員数は、現在85万人程度。核家族化や都市部への人口集中が、主な減少理由と考えられますが、平成以降は女性の参加数が増加しています。また、東日本大震災を機に防災への意識が高まり、全国的な減少傾向の一方で徐々に団員数を増やしている地域もあるようです。
◎ 地域に根ざした防災チーム ◎
消防団に入団すると、非常勤の特別職地方公務員という扱いになりますが、本職との兼務はもちろん可能。居住地区や役職に応じて変動はありますが、数万円の年俸、7000円程度の出動手当があるほか、一定期間以上勤めた際の退職報奨金や、公務災害の補償もあります。同時に、規定の講習や研修を受けることで、危険物取扱者、防火・防災管理者といったさまざまな資格を自動的に取得できる可能性もあります。
消防署や自主防災組織、NPOとの連携によって、自分たちが住む地域を自分たちで守るチームが消防団。一人でも多くが参加することによって、より安心した毎日が過ごせるはずです。また自分自身は入団しないまでも、地元の消防団のことを知っておくのは良いことでしょう。まずは、ご自身が暮らす場所の市役所や町役場、消防署など訪れ、聞いてみてください。その実態や申し込み方法が詳しくわかるはずです。
※詳細な入団資格は市町村ごとに条例で定められており、異なる場合があります。
消防団オフィシャルサイト
総務省消防庁が運営。消防団に関する具体的な活動内容、入団方法の解説、近くの消防団の連絡先などを詳しく知ることができます。
【起業の取り組み】情報を拡大して、より多くの人に伝える「かくだい君neo」が役立つ場所
エム・ビー・エス株式会社
「かくだい君neo」は、文字通り原稿を拡大コピーする装置だ。
A4サイズの原稿を最大A0ノビサイズまで拡大コピーができる(約4.8倍)。用紙はロール紙を用いるので、A4の用紙を縦に2枚3枚とつなげた原稿を入れれば、帯状の看板や横断幕サイズの出力も可能。トナーもインクも必要ない。感熱式のロール紙と電源さえあれば使用できる。
「この装置を、被災地で役立ててもらえないだろうか?」。そんな思いがエム・ビー・エス株式会社の執行役員 岡田英孝さんを動かした。
2014年の長野県新城断層地震の際に設置された白馬ボランティアセンター(社会福祉協議会)に、この装置を持参し、協力を申し出た。それ以後、多くの被災地でボランティアセンターに対して寄贈、長期貸与、用紙の提供、自社スタッフ派遣による掲示物作成などの支援活動を続けている。
社会福祉協議会が設置するボランティアセンターも 、自治体が設置する避難所も、多くの人が集まる場所だが、そこに来るほとんどの人は情報を求めている。
「授乳室がどこにあるのか?」のような小さな疑問から「ボランティア受付は何時から、どこで行われるのか?」「ボランティア保険に未加入の人はどこに行けばいいのか?」など、数え上げればきりがない。よく寄せられる疑問に対する回答が、大きな紙で張り出されていれば瞬時に伝わるし、ボランティアセンターや自治体の職員がそうした疑問に対応しなくて済むぶん、それ以外の質問や疑問に対して丁寧に対応できる時間が持てるのだ。
現在、社会福祉協議会による災害ボランティアセンター立ち上げ訓練の際には、エム・ビー・エス社員も参加し、この装置の使い方をレクチャーしており、導入する社協も増えているという。
災害時に限らず、 市民によるイベントや講習会の案内板などにも利用されれば、平時から市民団体と社協との繋がりを強化するというメリットもある。
「場所を示す標識や看板以外では、たとえばボランティアへの『行ってらっしゃい』『お疲れ様』などのメッセージなどは、暖かみのある手書きのテンプレートを用意しています。手書きの方が気持ちも伝わるから」(岡田さん)。
また「頑張れ宇和島」など中央にのみメッセージを印刷、その周囲に人々が寄せ書きできるようなボードの使用も提案している。情報のやりとりを超えて、想いやりや勇気の交換の場を作るツールにもなっているのだ。同社では活用事例を知ってもらうことと、災害時の情報発信を目的に、facebookページも立ち上げている。(加藤久人)
第27号 は、他以下の取組みをご紹介しています。
あの町この町の実践
2面 ● それぞれの防災と復興 ボラコなごや/三陸国際芸術祭
3面 ● もしものときの生活再建入門 ● 都市防災ぶートキャンプ ● 書籍紹介
4面 ● 人と復興
続きはこちらからご覧ください。
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「あなたにもできる」小さなアクションもご紹介します。
年4回、自身や災害について考え話し合う時間をもってもらうことが狙いです。
ビジョンは、「震災リゲインプラス」の協賛企業として、災害への備えを促進しています。
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会費は各地への「震災リゲインプレス」送料等に充当させていただき、会員の皆様にもお届けします。
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