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阪神・淡路から25年 問い続ける復興

支え合い、備え、いのちをつなぐ
『震災リゲインpress』 転載記事
31号 発行:2019年11月20日

阪神・淡路から25年 問い続ける復興

来年は阪神・淡路大震災から25年の節目。四半世紀で制度やボランティアがどう変わったのか、兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長の室崎益輝さんにお話を伺いました。

◎ 市民が求めた公的支援の制度化 ◎  
兵庫県生まれの室崎さんは、もともと建築の「火災」分野の専門家でした。地震火災対策の研究から防災も専門とするようになり、神戸大学教授に就任。そうしたさなかに「1・17」を経験しました。  
自ら被災者として、また地元の研究者として倒壊家屋や人的被害、避難所や仮設住宅の調査に奔走。しかし、長い避難生活を続ける被災者から聞かれたのは 「希望がない」「死にたい」などの声でした。
当時、国は私有財産の被害に財政措置はしない立場で、家や職場を失った被災者は先がまったく見えない状況だったのです。

室崎さんは、研究者として調査しているだけでいいのかと自問。作家の小田実さんらを中心にわき起こっていた公的支援の制度化を求める「運動」の中にも入っていきます。
「復興とは一人ひとりに着目して豊かさを取り戻す『人間復興』でなければならない。こうした考えは神戸では早い時期から共有されていました。さまざまなネットワークや会議ができ、約2500万人分の署名提出を経て被災者生活再建支援法ができました」と振り返る室崎さん。同法の成立はこの四半世紀における災害関連制度づくりの最大の成果と言えるでしょう。ただし、それがすべてではありませんでした。 「『豊かさ』の中には生業や雇用も含まれます。生活再建支援法は主に住まいの支援。経済が順調なときはともかく、災害で地域経済が崩壊した場合はどうすればいいでしょうか」。室崎さんはこうも問いかけます。  

実際、その後の新潟県中越地震、中越沖地震、そして東日本大震災では地域経済や雇用の再建が大きくクローズアップされました。国は中小企業を対象にした「グループ補助金」などの制度を創設しましたが、単なる補助金制度では「お金の切れ目が復興の切れ目」になってしまうと室崎さんは指摘。本当の「人間復興」「生活復興」とは何かをまだ考え続けなくてはなりません。

◎ ボランティアの「進化」も岐路 ◎
一方、こうした復興を公的支援と共に支える意味でも、災害ボランティアは欠かせない存在となりました。
阪神・淡路では「ボランティア元年」と呼ばれるほど多くのボランティアが活躍。中越地震では社会福祉協議会のボランティアセンターが窓口になり、被災者の「ニーズ」と人手の「マッチング」が盛んに行われました。さらに現場では窓口を細分化する「サテライト方式」が普及するなど「ボランティア活動は少しずつ進化してきました」と室崎さんも認めます。  
しかし、昨年の西日本豪雨、そして今年の台風災害はあまりに広域的で、作業もより専門的な技術や機械の確保と安全対策が不可欠に。人口減少社会の中で 「ボランティア頼み」の限界も見え始めています。  

室崎さんはアメリカの赤十字社のように普段から災害対応の訓練を体系的に行い、非常時には少数精鋭で避難所運営などに当たる「ボランティアのプロ」とも呼べる人材育成に注目。日本でもこうしたシステムが必要だと主張し続けてきました。  そのうえで「被災者に寄り添い、気持ちを受け止めるボランティア」と行政、地域とがスクラムを組んで真の復興を目指す−−。そんな次の時代のゴールを、室崎さんは見据えています。


第31号 は、他以下の取組みをご紹介しています。
一歩ずつの積み重ね
2面 ● 災害と復興を今に伝える
3面 ● もしものときの生活再建入門 ● 台風被害と農業支援 ● 書評ほか 
4面 ● 人と復興・防災 ● 図表で考察
続きはこちらからご覧ください。
記事:関口威人 イラスト:飯川雄大 
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