支え合い、備え、いのちをつなぐ
『震災リゲインpress』 転載記事
37号 発行:2021年10月11日
3.11から10年が経ちその経験も忘れられがちです。宮城県仙台市で被災した筆者が、当時のメモをもとに防災のヒントなどをまとめました。
<取材・文=藤田沙智代 イラスト=飯川雄大>
発災時に家の中で起こったことと対処法
地震が発生した当時、食器棚は耐震ポール、本棚は付属の金属ポールで固定していましたが、どちらも割れたり曲がったりして効果を発揮しませんでした。なにしろ70kg超のマッサージ椅子が1m以上も移動するという、大きく長く続いた揺れでした。一概に耐震ポールが役立たないというわけでは決してありません。
食器棚は下に敷いていた転倒防止安定版「ふんばる君」のお陰で、前後にグラグラ揺れながらもなんとか転倒を免れました。食器が次々に落ち破片が飛び散り、棚自体が凶器でした。震災後は上下2段を別々に置き、扉にはストッパーを取り付けました。
背が高い本棚は転倒して折れ、低いものに変えました。冷蔵庫上には向きを変えて耐震ポール数本を設置。定期的な点検や交換も必要かもしれません。
キッチンのカウンターにもともとついていた耐震ラッチは優れもので、大きな揺れに反応し扉がロックされます。中にあった日常使いの食器はシェイクされて欠けは生じましたが割れずにすみました。
キッチンカウンター上の電子レンジ、炊飯器、オーブントースターはすべて落下して壊れました。米びつも倒れ、散らばった米の上にレンジ扉のガラス破片が混じり食べられない状態になりました。米を袋のまま保存している家庭はセーフでした。現在は米びつの蓋の部分を養生テープで固定しています。
震災直後の暮らしのもよう
電気は4日後に復活しましたが、ガスは25日間止まり、上記の電気調理器具が壊れたのは痛手でした。カセットコンロはガス缶が貴重でなかなか使えず、ホットプレートやおかゆ鍋など生き残った電気調理器具をガス台に並べて使用。宅配便の復活後、友人にIHヒーターを送ってもらい非常に助かりました。
お風呂は近くのオール電化のお宅で週1回入浴させていただき、他の日は洗面所で洗髪していました。ペットボトルの蓋に釘で穴を開けジョウロ状にし、ポットで沸かしたお湯を入れて使用しました。
立体駐車場の地下にある車は電気が復活するまで動かせず、避難用品などを入れておいても使えません。震災直後のガソリンスタンドの給油の列は数キロ・数時間に及びました。少し前に進んではエンジンを切り、毛布にくるまり、おにぎりを食べお茶を飲みながら進みました。列は進み続けるので、一人だとトイレに行けず困ります。現在は満タンを心がけ、ガソリン携行缶をベランダに常備しています。
食料や必需品の買い出しは自転車で回りました。どこのスーパーの前も長蛇の列。小売店には何が残っているかわかりませんが、待ち時間が短いのは利点です。買い物は小さな店をくまなく回る作戦に。
水や非常食の他に、カセットボンベ、ティッシュ、トイレットペーパー、ラップなど、その時になって慌てて探し回らなくてすむ準備が必要と学びました。
瓦礫やホコリで空気は日々悪くなり、喉が痛み出しました。ドラッグストアを探し回りようやく龍角散とトローチを入手。避難袋に入れておくべきものだと痛感しました。飴やチョコレートなど甘い物も欲し、友人達が送ってくれてありがたかったです。
備えあれば憂いなしを肝に銘じて
最後に震災後に取り入れたものを箇条書きで挙げてみます。ソーラーランタンを窓辺に多数置いて常に充電。ライトにもなり充電機能もあるペダル式発電機。ローリングストック食。非常用簡易トイレ。非常持ち出し品のほか、在宅避難に備えての物資の備蓄。自宅付近で被災した場合に限り役立つものですが、「備えあれば憂いなし」は基本でしょうか。
第37号 は、他以下の取組みをご紹介しています。
忘れずに覚えておきたい震災時に困ったこと・役立ったこと
2面 ● みちのく潮風トレイルを歩く
3面 ● 災害教育を知る旅
● 3.11伝承ロードを訪ねて
4面 ● 市民・地域防災を考える本
● 災害支援の現場から
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