“サブスクリプション”というと、NetflixやSpotifyといったデジタルコンテンツの定額配信サービスや、AdobeやMicrosoftなどで採用されているソフトウェアの販売形態のことを思い浮かべる人が多いでしょう。
もともとは、雑誌などの「予約購読」の意味を持つsubscription。近年では、リアルでの「モノ」「サービス」においても、サブスクリプションモデルを採用しているケースが多く見られるようになっています。
今回は、注目を集めているサブスクリプションについて、複数の事例を交えながら、メリットや成功のポイントを見ていきましょう。
サブスクリプションはユーザー/企業双方にとって多くのメリット
サブスクリプションが注目される背景にあるのは、その数々のメリット。サービスを受けるユーザーと、提供する企業の双方がメリットを享受できるビジネスモデルになっています。
ユーザー側のメリット
- 初期費用が少額で済む
映画や音楽といったデジタルコンテンツでは、初めて視聴するものに対し、自分の好みに合うかどうかわからないのに、その都度お金をかけるのは少々ハードルが高いもの。動画配信サービスのNetflixのように、少額の費用でいろいろなコンテンツを視聴できるのはありがたいところです。もし自分に合わなければ契約を解除すればよく、それ以上の費用が掛からないのもメリットだといえますね。
- 継続利用しやすい
たとえばソフトウェアでは、従来のパッケージ型の場合、バージョンアップされるたびに新しいものを買わなければなりません。一方サブスクリプション型の場合は、定額料金にアップデート費用も含まれています。特にメリットを感じられるのは法人客。サブスクリプション型サービスの利用で、ソフトウェアがいつアップデートされるかわからず、予算の管理がしづらい」という課題が解決されます。
- 高いコストパフォーマンスが期待できる
たとえばdTVでは、月ごとの定額で、映画やドラマ、アニメなどの映像12万作品が見放題。利用すればするほどお得な仕組みになっています。また、サービスによっては利用状況に応じて複数のプランから選べるものもあるなど、無駄なく使えるよう工夫されています。
企業側のメリット
- 継続して安定した売り上げが得られる
顧客を囲い込めるため、安定的なリピート購入が実現できます。契約状況によって多少の増減はあるものの、定期的にある程度の売り上げがあれば、経営上の戦略も立てやすそうです。 - 開発コストを抑えられる
たとえばソフトウェアをパッケージ型で売ろうとすると、アップデートするたびにデータをCD-ROMに入れ込み、包装を準備するなど、大きなコストがかかってしまいます。
サブスクリプションの場合はこれらのコストがかからないので、浮いた分の資金で商品価格を下げたり、開発費用を増やしたりといったことが可能です。特に商品価格が下がれば顧客の獲得もしやすくなり、いい循環がつくれそうですよね。 - 顧客データの収集・蓄積・利用が可能
顧客の属性や利用状況などのデータを収集・蓄積して、今後のサービス改善に活かせます。たとえば、サブスクリプションモデルでの飲食店を展開している株式会社favyは、会員制を採用しており、どの会員がいつどのようなメニューを注文したか、といった情報をデータとして蓄積。「おすすめメニュー」の案内や、新商品の開発に活かし、長期的に見た契約の継続につなげているといいます。通っているお気に入りのお店が自分に合ったメニューを提供してくれれば、ユーザーとしても通い甲斐がありそうです。
- プラットフォーム化して広告収入を得られる場合も
音楽配信サービスSpotifyは、利用期間無制限で、無料で4,000万曲を視聴できる驚きのサービスが話題になっていますよね。カギとなっているのは広告収入で、アーティストへの印税も広告収入から支払われています。出稿主にも満足してもらえるような広告スタイルの工夫も重要になるでしょう。
事例から見る!サブスクリプションを成功させる3つのポイント
さまざまなメリットがあるサブスクリプション型のビジネスモデルを成功させるには、以下の3つのポイントがあるといわれています。事例を交えながら見てみましょう。
顧客とつながった継続的なサービスだからこそのメリットを提供
ひとつは、顧客にとって「サブスクリプションモデルならでは」のメリットがあることが重要です。
たとえばairClosetは、プロのスタイリストが選んだ服が定期的に送られる月額定額サービス。送られてきた服やコーディネートの感想を送ることで、よりユーザーの好みに合った服が送られるようになります。継続的にスタイリストとコミュニケーションをとることで初めて実現されるメリットですよね。
豊富なプランの選択肢を用意する
多くの顧客を獲得し、契約した顧客との関係を継続するためには、顧客ひとりひとりに合った無駄のないプランが用意されている必要があります。
具体的には、安価または無料の「お試し用プラン」、基本的なサービス内容を網羅した「ベーシックプラン」、ヘビーユーザーやより上質な体験を求める顧客向けの「プレミアムプラン」、といった“段階ごとに”設定することが多くなっています。
たとえば、月額定額の車乗り換え放題サービスNORELは、初めに乗りたい車を選び、最短90日でさまざまな車に乗り換えが可能になるサービス。
プランは3種類で、価格に応じて車種の幅が変わる仕組みになっています。気軽にいろいろな国産車を試してみたい人から、購入となるとなかなか手が届かないような外車を体験してみたい人まで、さまざまなユーザーが利用できるサービスになっているのがポイントです。
離脱の防止とアップセルを目指すことでLTVを最大化する
サブスクリプションのビジネスモデルにおける顧客単価は、LTV(顧客生涯価値)で測られることが一般的です。
LTVを最大化するためには、顧客ロイヤルティを高めて離脱を防止するとともに、プランのアップグレード(アップセル)を目指すことが重要になります。
たとえば、オンラインストレージサービスのDropboxは、容量2Gが含まれるフリーミアムのDropbox Basicプランからサービスを利用可能です。
容量が足りなくなったときには、まずDropboxを知人に紹介したり、コミュニティフォーラムに参加したりすることで、無料の追加容量を増やせるようになっています。この過程で、ユーザーのDropboxへの関わりを深めるのが狙いです。
また、ユーザーの関わりが深くなれば、使用容量が増え、さらに容量が足りなくなるケースが出てきますよね。そこでアップグレードを勧めるメッセージを表示し、より容量の大きい有料のプランへ、アプリ内で変更できるようになっています。継続性が高まり、顧客が成長することがアップセルにつながっている興味深い事例だといえるでしょう。
おわりに
「モノ」から「コト」を買う時代になり、特に注目を集めるサブスクリプション。複数の事例を見ていくと、ビジネスモデルとしてのメリットや成功のポイントがよく見えてきますよね。
特にこれから新しく事業を起こしたいと考えている方は、ひとつの選択肢として、サブスクリプション型のサービスを検討してみてはいかがでしょうか。
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