ビジネスパーソンにとって、高い「人脈力」は強力な武器になります。しかし、「一体どうしたら相手の懐に入れるのか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、1000人以上の社長とアポを取れる人脈を活かして大企業へのトップダウン営業を支援するTOP CONNECT株式会社・内田雅章社長にインタビュー。
ビジネスパーソンが生き抜いていくためのスキル作りや、顧客の心をがっちり掴むコツを伺いました。
「自分に向いている仕事」でコミュニケーション能力を駆使することが重要
―内田社長から見て、ビジネスパーソンに必要なスキルはなんでしょうか。
まずは、自分が何で勝負するのかを決めることが大事です。
営業なのか、経理なのか、秘書なのか、はたまた広報なのか。自分で決めるにしろ人に相談するにしろ、それを決定しておかないと、十分に力を発揮できない可能性がありますよね。例えるなら、関取のような体型をしているのに「速く走る競技をやりたい」と思っても、それは難しいです。
「この仕事をやりたい」という気持ちも重要だけれど、すべてを総合的に見て、自分に向いている仕事を選ぶというのが一番大切だと内田社長は語ります。
次に必要なのが、コミュニケーション能力です。
相手にいい気分になってもらい、会話を展開させて、自社にとってより優位なところで話を決着させないといけないですよね。
会社は1円でも高く売りたいし、顧客は1円でも安く買いたい。基本的にビジネスでは利害関係が一致しないんです。だからこそ、どこを落とし所にするか考えないといけません。
自社だけが得をする話には、誰も乗ってきませんから。
「貸しを作る」ことがよい人間関係を持続させる
―具体的に「コミュニケーション能力」とはどのようなものでしょうか。
たとえば、希望金額で売れなかったときには「今日はうちの会社が泣いておきますけど、半年先はよろしくお願いします」と“貸し”を作っておくんです。
これが結果的にはよい人間関係を持続させていきます。
私は多くの経営者の方とつながりがありますが、毎週会えるわけでも、毎日メールをするわけでもありません。
それでも多くの方々が時間をくれるのは、ひとえに私からあまりお願いをしていなかったり、私の話が面白いからなんじゃないかと思っています。
貸しを作ることで、相手との信頼関係を築いていく・・・・・・まさに「好意の返報性」(恩義を感じた相手には何かお返しをしたくなる心理)を利用しているわけですね。
望むように売れなくても、「ラッキー!」と考えます。なぜなら、それってすごい貸しじゃないですか。私はもう、貸しを作りたくてしょうがないんですよ(笑)
食事だって奢りたいですし、相手にとって明らかに有利なことでも、進んで請け負っていきますね。
特に、どこかに行くとか、誰かを紹介するとか、自分が時間を使えば済むものならなおさらです。
しかし、現場の若手営業マンの多くは、今だけを生きています。目の前の利益だけを見ています。
たとえば、お客様先へ訪問するのにお土産を持参する際も、「お土産代の2000円を払うのがもったいない」と感じてしまう。ですが、2000円払って2万円の利益が出るならいいじゃないですか。
そういう気遣いを自然にやると、相手は大事にされているような気持ちになる。そのためには、まず相手を知り、ニーズを掴むことが大切です。
内田社長は相手との会話で盛り上がるネタを探るため、名刺の裏表にかなりの個人情報を入れているそうです。さらに、「会話の先の先まで想像する」ことも必要スキルだといいます。
デキる人は「一週間後にこんな仕事があるから、今こういう準備をしないといけない」と常に先のことを考えています。準備が済んでいるから、商談の場であれこれ頭を使わなくて済む。
「お客様からこう言われたらこう答えよう」「この金額だったらOKだけど、この金額だったら持ち帰ろう」と判断基準をあらかじめ決めていれば、心に余裕がある状態で臨めるんです。
「数打ちゃ当たる」営業が無駄だと気づくのが鍵
―「デキる人」と「デキない人」の違いは、アポの前に先を想像してきちんと準備ができるかに表れてくるということですね。
行き当たりばったりでバカスカ売り込みに行くんじゃなく、事前に準備して確度を高めた方が自分のスキルが上がります。アポの数を半分にしても、精度を倍にすれば同じこと。
狙いを外さなくなると、自分に自信がつきますし、なんといっても楽です。
とはいえ、「数打ちゃ当たる」スタイルから、「確度の高いコミュニケーション」に変わるのはなかなか難しい気がしますが……?
それが難しくないんです。そのやり方が無駄だってことに気づくかどうか。
もし隣に、確度の高い営業ができている人がいたら、その人を真似したくなると思います。「普通の友達」と付き合っていてもあまり意味がないということです。
成果を出す人って、成果を出す人としか戯れないんですよ。お互い「こうしたらもっと利益が出せるよね」と刺激し合うんです。
優秀な人の輪に入るためにはどうしたらいいか。まずは、そういう人たちが集まる場を見つけましょう。
たとえば、社長に「今日はどういうイベントに行くんですか?」と尋ね、「◯◯の会だよ」と言われたら、「じゃあ、私、鞄持ちで行っていいですか?」とついていく。そうすれば、その世界を見ることができますよね。
実家の小さな服屋が繁盛店になったワケ
―そもそも、内田社長が人脈作りをしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
19歳で上京するとき、親から「人脈作りとゴルフを実践しろ。とにかく、この2つがお前を助けるから」って言われたんですよ。それ以来、これをずっと意識しています。
両親は田舎街で小さい婦人服屋を経営していました。それがすごく繁盛していたので「どうしてうちの店はこんなに流行るんだろう」と理由を聞いたら、「人間関係を使いながら上手くやっている」という答えだったんです。
たとえば、展示会で服を仕入れる際、ほかの業者と取り合いになるんです。ですが、父だけは前日の夜に呼んでもらい、ひとりでゆっくり、好きなだけ服を選んでいたんです。なぜ、そんなことができたのか?
「担当者に鰻をおごっていたんです!」
取引先に貸しを作り、信頼関係を盤石にするスタイルはお父様直伝のよう。さらに、内田社長のご両親は顧客に対しても画期的な販売方法を採っていました。
私の実家は、今から50年以上前からツケで洋服を売っていたんです。そんなことをする服屋、ほかにないですよね。
お客さんは毎月給料日にお金を持ってきて、また買っていっていました。ツケがあるからこそ、永久に買い続けるんですよ。
それに、他所の人からたくさんもらったみかんやトマト、コーヒーを来た人全員に出していましたね。服を買わなくてもあげちゃうから、お客さんはみんな、うちの服屋に来ると何かもらえると思ってるんです(笑)
そうすると「なんだか悪いから、一枚ぐらい服を買っていくか」と購入してくれる。
内田社長とご両親のエピソードからは、ビジネスにおける人間関係の重要性がひしひしと伝わってきました。相手のニーズを掴み、貸しを作る。これを念頭におくだけでも、現場での意識ががらりと変わりそうです。
内田社長、お忙しい中ありがとうございました。