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201705.25

大事なのは「やり方」と「やる量」。営業コンサルに聞いた理想の営業マネジメント

企業の経営戦略に従い、各部門がそれぞれのミッションを行っていく。その戦術設計をして実行していくのがマネージャーの仕事。

言ってしまえば当たり前のことではありますが、目標達成に向けてチームの計数を担う営業マネージャーは、皆さんそれぞれに悩み課題と戦っていると思います。

“事業を営む”営業部門におけるマネージャーの仕事、パフォーマンスを上げるためのPDCAのポイントとは……。

今日は、大企業から中小企業、公益団体まで、営業課題解決についてのコンサルティングサービスを提供する株式会社VERISITEの代表取締役・長瀬勝俊さんに、高い生産性をもたらすマネージメントについて話をうかがいました。

「やり方(やること)」と「やる量」をマネージメントするのがプロセスマネージメント

―長瀬さんやコンサルタントのみなさんは、営業に特化したコンサルティングや代行を手がけてらっしゃいます。ズバリどんなことをどんな手順でしているのですか?

―長瀬
チームパフォーマンスをあげるための各プロセスの定量、定性分析と業務の再設計、マネージメントポイントの改善など、営業戦略構築から戦術の実行までを担っています。

言ってみれば、経営が決めた方針に従い持続的、継続的に高い生産性を維持できるような仕組みの構築、業務設計や人材育成を担わせていただきます。マネージャーの仕事をお手伝いしているわけです。

クライアントの営業活動、営業組織を分析した上で、高い成果を生み出せるよう組織構築していくのですね。

どんなアプローチで課題点や改善を図っていくのでしょうか。

―長瀬
みなさん、営業のプロセスを分解してそれぞれのKPI・数字を追いかけるプロセスマネージメントをしている、とおっしゃいます。

ただ、大抵の場合で、概念だけに留まっています。数字だけしか追っていない、プロセスにある課題に着目していないところがほとんです。9割はそんなクライアントではないでしょうか。

数字だけ追うのではなく、“やり方”と“やる量”をマネージメントすることが、本来のプロセスマネージメントです。

例えば、電話のアプローチ一つでも、属人的にいろいろなスクリプトをバラバラとやっていて、それでアポ率、受注率だけ測っても何も意味がありませんよね。スクリプトを標準化してリストマネジメントをして初めて数値が意味を持ってきます。

「やる量」だけでなくいまあげたような「やり方(やること)」も重視する必要があるということですね。

―長瀬
そうですね。営業同行した上でどの様なヒアリングをして、どの様なツールで、どの様な説明をしているのか、しっかりとクロージングしているのか、こういったことを丁寧に把握しなくてはなりません。

そのため、まず営業プロセスを定量的、定性的にみるようにしています。

“やり方”と“やる量”をチェックすることが、営業マネージメントの分析における最初のステップなのです。

営業活動のプロセスは、お客様に会う前の事前準備、アプローチ、ヒアリング、プレゼンテーション、クロージング、フォロー、に分け、各プロセスを一個ずつ、一人ずつ、活動内容をみていくのだとか。

各プロセスにおける個人別の数値のバラつき見ると、その個人や部門全体の課題が見えてくるとのこと。

―長瀬
個人別に各プロセスの数値と合わせて「やり方」を丹念に見ていきます。問題がある場合は必ず異常値が見つかります。低すぎる数値、高すぎる数値などから課題、問題が見つかります。

例えば、面談数が多く、商品知識もあり、社内のロープレではプレゼンも上手いのに受注率が低く売上が上がらない……といったケースもあります。この場合は事前準備やヒアリング、クロージングなど課題がありそうな点に仮説をたてます。これを現場で確認し対応策を打っていきます。

このように違和感ある異常値を見つけ、実体を把握し、直すべきことに着手していくのです。

プロセスを分解して、やるべきことを決め(“やり方”)、そのやるべき量(“やる量”)を決め、できているかを確認していく。 人に比べてやる量が低いことは見つけやすそうですが、高すぎる数値から前後のプロセスにおけるやり方における問題も見つけていけるわけですね。

それもやり方を決めていることで全体のパフォーマンスを正確に測定できる。だから、改善事項の判断ができる。なるほど、よく理解できました。

必ずどんな人にも課題がありそればチームの課題でもある。みつけた課題に優先順位をつけ、決めたことをまわして経過をみて改善していく。それがPDCA

―長瀬
「うちはメンバーに任せていますから」と言われることがありますが、任せ方次第では、これはマネージメント放棄です。

やり方とやる量をきちんと把握し承認した上で任せるのは分かりますが、それも把握せず任せるというのは、目標管理に向けた責任も営業担当の成長に対しても、責任が果たせないはずですし、リスクや悪くなっていく前兆さえ把握できないはずです。

調子が良いときはいいのかもしれませんが、そもそもそれが本当に良い状態なのかは、基準がないから本当の意味では、分かっていないはず。

もっと良くなるかもしれないのに、どこが良いか悪いか実際に判断できないから生産性も成果もあがらない。

もしあがってもたまたまかもしれないですしね。

営業マネージメント放棄会社のたとえとしてお話していただいたのは、クライアントの某大手IT関連企業の話。

営業担当者のやり方を属人的に任せ、時間を割かせてはいけないからとレポートも求めないというのが、長く正論とされていたとのこと。もしマネージャーが同行したり、やっていることをフィードバックしてもらっていれば、正しく案件を進捗させているか管理できるはずですが、それができない。

会社は、決めた方針、方向に進めたいし、打った施策には良い反応をとりたい。それなのに、俗人的にやらせていては舵取りはできません。今やっているやり方が何なのか分からないし、このやり方にしようとしても向かせることもできなくなってきます。

営業マネージャーに、部門の課題を質問したところ、○さんはスキルが高いが△さんは低いとの回答だったんだとか。しかし、実際に二人それぞれのプロセス毎のやり方とやる量を分析してみると、○さんにも△さんにも課題がみつかったそうです。

そしてその中で優先順位をつけて正していったそうです。

―長瀬
必ずどんな人にも課題があると仮説をたてて分析していくのです。そして、みつけた課題に優先順位をつけて変えていく。経過をみてチェックして更に改善していく。それではじめてPDCAになるんです。
これは営業マネージャーの仕事です。営業生産性が落ちる状態になるときは、マネージャーがあいまいな指示をした場合が多い。

具体的な戦略戦術におとしこんで、やり方まで明確なら、進むべき方向に必ず向かいます。

やり方を徹底してやっていき、その量もあわせてちゃんとチェックしていくのがPDCAです。間違っていたり改善のポイントが判断ができるから、徹底して変えることができますから。

なるほど。いま伺ったことをまとめると、以下です。

営業におけるPDCA

  • 営業の各プロセスにおけるやり方とやる量を、それぞれ個人別に計測してチェックしていく。
  • 測れていない場合は、徹底していく。
  • 異常値をみつけ、分析していく。全体平均、指標から見て低すぎないか、高すぎないかといったことも問題視する。高すぎる数値は、課題が潜んでいる。
  • やり方(ツール、伝えるべきこと、スクリプト等も含めて)とやる量を明確に決め定期的にチェックする。
  • 分析し、改善点を見つけていく。改善にあたっては、フィードバックが必要。
  • 成果が思わしくなくても、徹底していることで原因がみつけられるので、そこで変更していく。
  • 徹底して繰り返すことでPDCAが可能となる。

キーワードは、“しっかり”と“徹底”

―長瀬
営業部の中のトップ10%のノウハウを普通の営業や数値の出ない営業に共有して、トップパフォーマーのやり方を徹底してトレーニングし各プロセスの数値目標を徹底すれば、間違いなく生産性があがり数字があがります。
この様な標準化を図り数値管理することは、間違いなく営業マネージャーの仕事です。当たり前のことのようですが、徹底してしっかりやっていくことは、大変です。

やり方やスクリプトをエクセル表にまとめても、それだけでは徹底できている状態といえず標準化しているとは言えません。

やり方を決めても、覚えるまでトレーニングを徹底しきれないと中途半端になって成果は出ません。ロープレしてうまくできても、同行して、徹底させて。そこでやり方の標準化ができている状況と言えます。

標準化やまとめることはしっかりやる、できるまでやる、をしっかりやる、しっかりと聞く、徹底的にやる。

もしかしたら、マネージャーは過去の経験をそのままやろうとするからうまくいかないこともあるかもしれませんね。自分で苦労してやった、自分の中で標準化している。だから数字がでていた。

しかし、営業担当者はそれが当たり前でないし、努力の仕方が違う人もいます。

だからベストプラクティスを標準化したものを“しっかり”と作りこみ、“徹底”してやっていく。ツール、スクリプト、プロセス……そしてやりかたをみつけていくPDCAを繰り返し、全員のレベルをあげていけるんですね。

当たり前のようですが、きつく、難しく感じます。

営業マネージャーの最初の一歩

しかし、長瀬さんは、これは必ずできることだと言います。

それにはまず、チームメンバーと進むべき方向性に対して合意形成を図ることで、これは極めて重要な新任営業マネージャーの最初の一歩であるとおっしゃいました。

―長瀬
経営者や上司と自身の営業部門における本当の目標・ゴールを決め、そこへ邁進するために、ベクトルをそろえることです。

この道を一緒に進むと、会社が潤う。その過程で、あなたのスキルも上がり、成長していけるんだと。 必ずできることです。

チームの意思がそろっているからこそ、厳しいことも乗り越えていけ、結果的に生産性をあげ、皆にとっての本当のゴールに向かっていけるものですね。

進むべき道にそったものであると合意できているからこそ、“しっかり”“徹底”して“やり方”と“やる量”を実行していける。

当たり前のことのようですが、それをやるのが一番難しい。しかし、科学的に分析して実行していくためのヒントと勇気をいただけました。

長瀬さん、今日はありがとうございました!

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